高森町教育委員会では、にわかの調査事業を実施し、令和5年度に高森のにわか調査報告書を刊行しました。今月より、広報たかもりに連載し、にわかの調査を通じて、ここが面白い、特筆すべき点を町民のみなさんに紹介します!
■第1回「高森のにわか」の魅力とは
松岡 薫(天理大学人文学部歴史文化学科)(元高森のにわか調査員)
高森の夏といえば風鎮祭。今号が届くころには、造り物やにわかの相談など今年の風鎮祭にむけた打ち合わせがあちこちで始まっているころかと思います。さて、すでにご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、風鎮祭のなかで演じられてきた「にわか」は、「高森のにわか」として平成31(2019)年3月28日に、国の記録作成等を講ずべき無形の民俗文化財として選択されました。「にわか」として国選択無形民俗文化財となったのは全国で3件目となります。そこで、今回はどのような点が文化財として評価されたのか、この夏ににわかを見る際のポイントについてご紹介したいと思います。
▽笑い・即興・世相の芝居
まず、高森のにわかは1演目10分程度の即興的な笑いの芝居です。そのなかに、世相や流行を反映した話題を入れて演じることが大きな特徴です。口上から始まり、道行きで役者が登場し、もう一度道行きを挟み、最後は落としで終わるという一連の決められた演技の流れの上に、その年らしい題材や設定を創意工夫しながら盛り込みます。毎年演目が変わるゆえの意外性や驚愕性がにわかの特徴であり、魅力でもあります。さらには、2日間の祭りのためだけに数多くの演目が作られることは他の地域にはみられない高森の特徴だといえます。
▽高森弁での演技
高森弁での演技や「高森」などの地名がよく登場する点も特徴の1つです。こうした方言での演技や身近な場所・人を登場させることによって、舞台の上で演じられている内容がどこか遠い別の場所の話ではなく、私たちの暮らす社会と地続きの物語であると意識させます。なぜ、にわかには方言やローカルなネタが付きものなのか疑問に思っている人もいるかもしれません。それは、風鎮祭という特別な場において、方言やローカルなネタを多用した芝居を演じることで、「自分たちの笑い」を獲得しているからです。だからこそ、高森弁でにわかを演じることが大切なのです。
▽向上会
最後に、にわかを演じている人たちにも注目してみたいと思います。ご存知のとおり、高森のにわかは「向上会」という青年組織の人たちによって演じられています。かつては、学校を卒業後、35歳頃までの男子と限っていたようですが、現在は年齢も40歳前後に、また地区によっては女性会員も認めるというようになっています。こうした変化も、風鎮祭やにわかを継承していく上では重要なことでしょう。にわかに限ったことではありませんが、地域の芸能の意義を考える上で、その地域に暮らす人たちによって演じられ、継承されていくことはとても大切なことです。にわかが高森弁で演じられることと同等に、にわかを演じるのが他所の人たちではなく、地域の人たち自身であることはとても大事であると思います。毎年、時間をかけてにわかを作り、2日間の祭りを担っている向上会の方たちにも是非注目してみてください。
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