■子どもたちとの対話から生まれた気づき
花のないチューリップ
▽episode1
昨年秋、個々が植えたチューリップの球根。4月に入り順に咲き、全員のチューリップが咲き終えたと思った頃…
「この子のチューリップだけが咲かなかったからかわいそうで…。代わりに園の庭先に咲いているチューリップを1本もらってもいいですか?」
と話してくれた1人のお母さん。この提案がきっかけで子どもたちの対話が始まりました。
▽episode2
「はながない」
その理由はなんだろう?
対話を通して子どもたちの考えに触れてみます。
「うえかたへたやったんや」
「きゅうこんにむきあったやろ?それがよことかしたやったとか…」
「わかった!じゃあいまつちのなかにはなさいとるんじゃない」
「かぜびゅんってふくときあるしぼうとんでいったんじゃない?」
「かれるとしたいくしもうかれたとか」
「かれたらおわり」
「いや、またさくよ」
「みたにせんせいちゅーりっぷだけとおいしみずあげるのたいへんやったんかな?」
「はなはみずもいるしすなもいるよ」
「さく“じかん”がちがう」
▽加陽保育園園長 三谷邦代さん
咲かなかったチューリップについて、子どもたち一人一人が、想像を巡らせながら自分の考えや思いを言葉で伝えます。答えや正解を見出すためではなく、今ある知識と想像する世界を楽しみながら考えたり、友だちの気持ちを感じとったり…。そのプロセスこそが大切だと思っています。その後、この対話の内容を知ったそのお母さんは庭先のチューリップを持ち帰りませんでした。庭先のチューリップより、子どもたち自らの力に心動かされ、そこに価値をおかれたのではないでしょうか。咲かなかった1本のチューリップについてこれだけ深く考えたことがあっただろうか?私自身も振り返ります。「咲かない=かわいそう」ではないことを子どもたちが私たち大人に教えてくれたのです。
■まちの保育園・こども園ペダゴジカルチームディレクター 山岸日登美さん
教育学やレッジョ・エミリア・アプローチの哲学を踏まえ、保育現場で職員と共に子どもの姿から始まる探究活動についてリサーチや対話を行ったり、保育環境づくりのサポートを行うなど、加賀市・アプローチの充実に向けた伴走支援を行っていただいています。
保育の伴走をして1年が経ちましたが、加賀市には素晴らしい自然や風土、歴史、あたたかいコミュニティがあり、それらは子どもたちの生活の中に根付いているということを感じています。また、加賀市の先生方は、これまで大切にしてきた「子ども中心の保育」という考えをさらに発展させ、「子どもと共に学ぶ・学び合う」ことを目指し始めています。子どもたちの声に丁寧に耳を傾け、子どもの姿をよく見て、子どもたちの学びがより豊かになる様にみんなで対話を重ね、アプローチを構築していくプロセスの中で、新しい発見をたくさんしています。例えば、子どもたちのこれまでは見えなかった側面が鮮やかに見えてくる瞬間、子どもたちの考えや表現が深く広く素晴らしいこと、子どもの一言に私たち大人自身の世界観が広がる瞬間、まさに子どもは100の言葉を持っていると、あらためて子どもの未知数の可能性に心を躍らせています。加賀市へ訪問するたびに、実践が豊かになっていること、先生方が自分たちの考えで力強く歩もうとする前向きな姿勢に、毎回驚かされています。
「子どもは生まれながらに有能で無限の可能性を持っている」というレッジョ・エミリア・アプローチの「子ども観」を中心に置きながら、子どもたちの今と未来を見つめて、皆さんと共に加賀市アプローチを創っていくこれからがとても楽しみです。
■加賀市子育て支援課Instagram
「加賀市保育ビジョンの今」や「子どもたちの姿」を日々の保育現場からお届けしています。
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