文字サイズ
自治体の皆さまへ

地域医療最前線!公立河北中央病院赤ひげ通信

36/49

石川県津幡町

■急性後天共同性内斜視(スマホ斜視)
眼科 太田秀俊
急性後天共同性内斜視とは、幼少期から発症する通常の内斜視と異なり、小学生、中学生、高校生、さらに20代で発症することが多い内斜視です。世界で最初の論文は、2016年に韓国から発表されました。7~16歳で毎日4時間以上のスマートフォン(スマホ)使用により内斜視となった12例の報告です。最近発生した病気のため、どのようなものなのかについてはまだ分からないことが多く、患者数は若い世代を中心に増加しています。
幼児から発症する内斜視では、両眼で物を見る機能が発達していないため、物が2つに見えることは少ないですが、両眼で立体的に物を見ることができる人が内斜視になれば、物が二重に見えて困ります。

▽調節、輻輳、開散について
調節とは、近くの物を見るときに水晶体の厚みを増やして近くのものにピントを合わせる動きです。近くの物を両眼で同じように見るためには寄り目をしなければなりません。この動きを輻輳と呼びます。また、遠方に視線を移すと、両眼で見るために自然に両目の間が離れます。これを開散と呼びます。正常な人は調節、輻輳、開散が自動的に最適に行われます。
スマホ内斜視では近くの物を見るときの両眼の角度のずれは小さく、遠くを見るときの角度のずれは大きくなります。近くを見ることに特化して、遠方を見ていても寄り目をしているのです。
小学生での発症は、親がすぐに眼科を受診させるため、比較的発症から間もないことが多いですが、年齢が上がるにつれて、自然に治らないかと期待して半年や1年以上経過してからの受診が多いようです。
スマホ、携帯ゲーム機の使用制限や、近業は必ず30cm以上目を離して見ることを徹底して行う保存的治療では、治癒率は6%程度です。発症からの時間が短いほど治療に反応するようです。手術すれば90%以上治癒します。眼球を動かす筋肉で、内側へ引っ張る内直筋を後ろへ付け替えて力を弱め、外側へ引っ張る外直筋を前へ付け替えて力を強める手術です。通常の斜視手術よりも40%多めに矯正する必要があるとされています。最近では、筋肉を麻痺させるボツリヌス菌の毒素を内直筋に注射する治療も行われています。複数回行うことで、治癒率は50%程度になります。
スマホや携帯ゲーム機を目が触れるくらい近くで長時間見ることは避け、30cm以上離しましょう。30分連続して見たらしばらく遠くを見て、輻輳調節し続けている筋肉や神経を休めましょう。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU