■今月のイッピン!「九谷綿谷製(くたにわたたにせい)色絵金彩扁壺水注(いろえきんさいへんこすいちゅう)」
綿谷平八(わたたにへいはち)は天保8年(1837)に寺井に生まれました。当時の寺井地方は九谷庄三(くたにしょうざ)をはじめ優秀な名工が多く、素地(きじ)と上絵の研究が盛んでした。平八は安政5年(1858)に父の家業を継いで九谷商となり、京都や大阪、岡山、肥前へ出向いて販路拡張に努めました。万延元年(1860)には自宅に着画工場を設け、吉田屋風、赤絵、彩色、錦手(にしきで)(金襴)(きんらん)などを製作、明治6年(1873)のウィーン万博、明治9年(1876)のワシントン万博へ出品し、名声を博しました。また平八は明治10年(1877)以降、金沢工業商会の設立や石川県勧業博物館の創立などに尽力し、これからの活躍が期待されていましたが、明治18年(1885)に49歳の若さで亡くなりました。
平八の子・平兵衛(へいべえ)は明治15年(1882)に横浜に支店を出し、九谷貿易商として各国と盛んに貿易を行いました。明治20年(1887)には九谷焼は日本の陶磁器貿易額の第1位となり、九谷焼全生産額の80%が輸出されました。平兵衛はスペインやシカゴ、ポーランド、ベルギー等の万博で金・銀杯を得るなど活発な活動を行い、大正10年(1921)に58歳で亡くなりました。
この作品はドーナツ型の色絵金彩の扁壺で、山水や人物の絵が施されています。当時海外で流行した「ジャポニズム(日本趣味)」を取り入れた、輸出に向け海外のニーズにマッチする斬新なデザインのイッピン!です。(文・学芸員宮山)
九谷綿谷製 色絵金彩扁壺水注
サイズ:高27.5cm
作者:九谷綿谷製
制作年代:明治時代前期~中期
所蔵:|五彩館|
◆INFO
▽「第20回記念能美市美術作家協会展」
会場:五彩館・浅蔵五十吉記念館
期間:~11月24日(日)
▽コレクション展(4)
会場:五彩館
期間:11月27日(水)~令和7年1月26日(日)
▽「第6回オカノウエノまーけっと」
期間中
(11月9日・10日)入館無料
▽展示替えのため臨時休館(五彩館・浅蔵五十吉記念館)
期間:11月25日(月)・26日(火)
情報発信元:KAM能美市九谷焼美術館|五彩館|
入館料:一般430円・75歳以上320円・高校生以下無料
※浅蔵五十吉記念館もあわせて入館いただけます。
問い合わせ:【電話】58-6100【FAX】58-6086
※月曜休館
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