■今月のイッピン!「宮本屋窯(みやもとやがま) 赤絵獅子鳳凰図徳利(あかえししほうおうずとっくり)」
古九谷を九谷村で再興し山代へ移窯した吉田屋窯(よしだやがま)は、天保2年(1831)に閉窯しました。その吉田屋で永く番頭を務め、独立後も主家(しゅか)に資金融通で才覚を示した宮本屋宇右衛門(みやもとやうえもん)が山代の窯の譲渡を受け、閉窯後1年の天保3年(1832)に窯を再興しました。これを宮本屋窯といいます。宇右衛門は吉田屋の末期頃、窯運営に従事し窯管理のノウハウを得ていた子息の利八(りはち)を窯の支配人としました。また大聖寺の同じ町内で代々染物業を生業にしていた飯田屋八郎右衛門(いいだやはちろううえもん)の画力のあるところを見込んで、主工に迎え入れました。八郎右衛門は、染の糊(のり)置きで文様の線描が巧みであった点が、赤絵細描(さいびょう)で大成し、赤絵九谷は「飯田屋」や「八郎手(はちろうて)」とまで言われるようになりました。九谷庄三(しょうざ)は天保4年(1833)頃から1年半、この窯で赤絵を学びました。自らの誇りとなったこの九谷焼本流の窯での経験が、明治に入り名字を許されたとき自らの姓を「九谷」とした主な要因になったと考えられています。
本作は赤絵細描で吉祥文(きっしょうもん)である唐獅子(からじし)と鳳凰(ほうおう)を闊達(かったつ)に描いており、主題を囲む文様の配置や繊細さは、八郎右衛門様式とでも呼べるほど意匠化されています。素地本体は軽く酒が進むイッピン!です。(文・館長中矢)
宮本屋窯 赤絵獅子鳳凰図徳利
サイズ:胴径9.0/高19.8cm
窯元:宮本屋窯
制作年代:江戸時代後期
所蔵:KAM能美市九谷焼美術館|五彩館|
◆INFO
▽コレクション展(1)「春九谷展」
コレクション展(2)「文様表現の世界展」
期間:~6月9日(日)
会場:|五彩館|
▽「金継ぎをたのしむ会展」※最終日は16時まで
期間:~6月9日(日)
会場:|五彩館|
▽「第62回日本現代工芸美術展石川展 能美巡回展」
期間:6月12日(水)~7月15日(月・祝)
会場:|五彩館|
▽「第62回日本現代工芸美術展石川展 能美巡回展」関連イベント〈ギャラリートーク〉
日時:6月29日(土)13時30分~
会場:|五彩館|
講師:武腰冬樹氏
※6月10日(月)、11日(火)は臨時休館
|五彩館| ※絵付け体験もお休みです。
※|体験館|は9月末まで改修工事のため休館
絵付け体験は|五彩館|2階で可能です。(8月末まで受付)
■情報発信元:KAM 能美市九谷焼美術館|五彩館|
入館料:一般430円・75歳以上320円・高校生以下無料
※浅蔵五十吉記念館もあわせて入館いただけます。
基本的感染対策(手指消毒など)にご協力をお願いします。
問合せ:【電話】58-6100【FAX】58-6086
※月曜休館
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