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【特集】厚木とアユ 未来につなぐ「厚木の鮎(あゆ)」(1)

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神奈川県厚木市

釣り人、塩焼き、つかみ取り。相模川に面する厚木では昔から身近な生活の中にアユが根づいてきました。特集ではそんな「厚木の鮎」を守り伝える人々の姿を追いました。

■より大きく元気なアユを
厚木あゆ種苗センター
田辺 智之さん(36・三田)

春の空の下、三田にある厚木あゆ種苗センター(以下、センター)から涼しげな水の音が聞こえてきます。水車が回る水槽の中では体長10センチほどのアユたちが力強く飛び跳ねています。「今年のアユはよく育っている。これからが楽しみ」。センターの田辺智之さんは、放流に向けて5人の従業員と飼育作業に励んでいます。

▽アユを守るため
市内を流れる相模川は昔から多くのアユが遡上し、「鮎川」と呼ばれていました。今も6月になると市内外からアユ漁解禁を待ちわびていた釣り人たちが訪れます。センターは、相模川のアユの個体数を保つため1955年に相模川第二漁業協同組合が設立。2015年から、川の水産資源の維持管理を支援する内水面漁業協同組合連合会が運営しています。田辺さんが働き始めたのは10年前。当時は設備も古く生育が難しい環境で、現在の約5分の1の量しか放流できませんでした。アユが大きく育つよう、経験者のアドバイスを聞いたり、餌の種類や回数を変えたりと試行錯誤を繰り返すと生産量は少しづつ増え、19年には水槽を新たに6基設置。現在は年間で50〜60万匹のアユを育てています。

▽丁寧に育てる
アユの生育は、稚魚がセンターに届く1月ごろから始まります。田辺さんたちは毎日4〜5回餌をやり、泳ぎ方や食欲などの様子を見ながら与える量や大きさを調整します。水質をきれいに保つための水槽掃除も欠かせません。アユたちが調子を崩さないよう注意を払う田辺さんは「アユが大きく元気に育つため、できることは少ない。だからこそ小さな異変も見逃さないように観察している」と話します。4カ月で約5センチから12〜13センチほどに成長したアユは、4月下旬から5月にかけて相模川や中津川へと放流します。「放流するときが一番楽しみ。アユを守る仕事をしていると実感できる」と、川に放たれたアユたちを見守りながら田辺さんは話します。

▽多くの人に知ってもらう
センターでは他にも、相模川第二漁業協同組合と一緒に、アユのつかみ取り体験やイベント・売店での販売などに取り組んでいます。同組合の栗原信二代表理事組合長は「イベントなどを通じて厚木のアユに触れることで、多くの人に知ってもらえる」と、地元の人がアユに親しめる場を提供しています。
「地元の人が知り、好きになってもらうのもアユを守るために大切なこと」と真剣な表情で話す田辺さん。「厚木といえばアユ。皆さんの生活にもっと身近な魚になってほしい」。厚木のアユを守るため、これからも愛情を注いで育てていきます。

■アユの魅力を伝えたい
日本料理店店主
樽井 仁生さん(58・元町)

開店前の日本料理店の厨房で、真剣なまなざしで静かに包丁を動かしているのは店主の樽井仁生さん。食材の良さを引き出せるよう、丁寧に仕込みをします。
樽井さんのお店では、6月から10月まで看板メニューの一つとして厚木で育ったアユの塩焼きを提供しています。「生きたアユを使っているので取れる時期しか出していない」。樽井さんは真剣な表情で話します。

▽アユとの縁
徳島県で生まれ育ち、料理人を目指して大阪の専門学校に進んだ樽井さん。卒業後は日本料理の文化や歴史をさらに学ぶため、京都の老舗料亭で5年間修業を積みました。修行した店では夏に旬の食材として近くの川で取れたアユを塩焼きにしていました。鮮度や焼き加減など、おいしくアユを調理するための技を学んだ樽井さん。「生きた状態から調理すると、外はサクサク、中はフワフワに焼きあがる。ヒレも立ち見た目もきれいに仕上がる」と、新鮮なアユだからこそ味わえる魅力を話します。
樽井さんが市内で働き始めたのは26歳の時。結婚を機に厚木に引っ越したのがきっかけでした。料理を出すからにはその土地のおいしいものを食べてもらいたいと考えていた樽井さん。お客さんから「相模川でアユが取れるが、市内で食べられる場所が少ない」という声を聞き「せっかく近くでアユが取れるのだから、料理に出さないのはもったいない」と約30年間、厚木のアユを提供し続けています。

▽おいしく届けるために
樽井さんはアユが仕入れられる時期になると、毎日8時ごろにセンターへ。その日の分だけ購入して店に運びます。店内の水槽には、環境の変化に敏感なアユにストレスをかけないため、センターと同じ水温に調整した水を入れて鮮度を保ちます。「センターの人など一生懸命育てる人たちの思いを知っているからこそ、育ったアユの味を自分の手で台無しにしたくない」と手間を惜しみません。
毎年、市外からアユを求めて店を訪れるお客さんもいます。「今年もアユの季節がやってきた。多くの人に味わってほしい」と笑顔で話す樽井さんは、今日もお客さんに料理を振る舞うため、厨房に向かいます。

問合せ:商業観光課
【電話】225-2820

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