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【特集】厚木を味わう(4) 食卓を支える

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神奈川県厚木市

■採れたての魅力
牧場 牧歌(ぼっか)
河内 賢一さん(49・王子)
柔らかな日差しが差す丘の上から、牛や羊の鳴き声が聞こえてきます。市内で牧場を営む河内賢一さんは、農場の牛から搾った牛乳でチーズを手作りしています。昨年、河内さんのチーズはあつぎOEC(おいしい)フードに認定されました。

▽好きを追いかけて
「給食で余った牛乳をもらうためのじゃんけんには毎回参加していた」。幼い頃から牛乳が好きだった河内さん。家では、ヨーグルトやアイスクリーム作りにも挑戦していました。酪農家になるため、北海道の大学に進学。卒業後は愛川町を中心に酪農ヘルパーとして働き、酪農家が休みの時の搾乳や餌やりを担いながら牛を育てる経験を積みました。
牧場を開く資金を集めながら、自分でも牛を3頭飼い、ヘルパーをしていた農場に預け育てていました。搾乳した牛乳のうち、残ったものは長期保存するためにチーズやヨーグルトに加工。何度も作っていると、チーズが毎回違う味や硬さに仕上がることに面白さを感じました。「酪農家になると決めた時から自分で牛乳を搾り、加工して売りたかった」と話す河内さんは本格的にチーズ作りを始め、商品として売るために100種類以上のチーズを試食して研究。自宅の一階を改装したお店で売り始め、近くの小高い丘の上に牧場を開きました。

▽チャレンジできる場を
河内さんのチーズは主に手作りのヨーグルトと搾りたての牛乳で作られます。うまみと香りのあるチーズの味の違いを一つ一つ直接説明しながら販売しています。
牧場では、河内さんが飼っている牛や羊の他、友人の羊やヤギを預かっています。酪農に挑戦したい人をサポートできるように飼育に必要なスペースを提供しています。「牧場を始めるのに必要な十分な土地や資金を集めるのは大変。自分と同じように、一から牧場を始める人の力になれたらうれしい」と話す河内さん。次の目標に向けて歩みを進めていきます。

■変わらない味を届けたい
江戸屋養豚場
小原 克江さん(44・上依知)
「丁寧に育てた豚を無事に送り出せたときはほっとする」。小原克江さんは、夫の光貴さんと二人三脚で3代続く養豚場を営んでいます。常時約300頭を飼育し、年間550頭ほどを出荷。JAあつぎの夢未市やグリーンセンターで販売しています。

▽父の背中を追いかけて
幼い頃から養豚作業に励む父親の姿を見ていた克江さん。高校生の頃、「進路に迷った時、一人で頑張る父親の力になりたいと思った」と、卒業後に就農。豚の飼育に必要なノウハウを一から身に付けました。創業当初から変わらないこだわりは餌にあり、食堂や食品加工業者などで余った食材をリサイクルして使うエコフィードは、代々受け継いできた手法です。「リサイクル飼料は、資源を有効活用できる上に栄養があり食いつきもいい」と話す克江さん。時間をかけてよく育った豚は、一般的な出荷体重よりも10キロ増やすことで、「えどや豚」らしい柔らかく濃厚な味わいになります。

▽気持ちを込めて育てる
克江さんの一日は朝6時半の餌やりから始まります。豚舎の清掃や、健康状態などを小まめに確認し、豚になるべくストレスを与えない環境づくりを心がけています。「出産後の母豚や生まれたばかりの子豚は、特に繊細なケアが必要。表情や、鳴き声がいつもと同じか気を配ることが大切」と真剣なまなざしで話します。
今年5月、三田にグリーンセンターが完成しました。「今まで以上に地域の人が食べてくれる機会が増えてうれしい」。直接、味の感想やお薦めの調理方法を聞かれることが多くなったと笑顔を見せます。「地元の人たちに食べてもらえるのが一番うれしく、続けていくエネルギーになる。今後も一頭でも多く健康な状態で送り出したい」と力を込める克江さん。周りの声を力に変え、これからも安心・安全でおいしい豚肉を食卓に届けていきます。

■こんな農産物も作っています
▽健康を支える一助に
ボケの実農園
有江 久美子さん(56・三田)
5年前からボケの実を栽培しています。古くから漢方薬や観賞用に使われたバラ科の植物で、収穫した実をシロップにして販売しています。甘酸っぱく梅に近い味わいで、整腸作用や疲労回復、のどの痛みの緩和などの効果が期待できると言われています。厚木の新たな名物になり、幅広い年代の方に親しんでもらいたいです。
販売場所:夢未市

▽季節で変わる蜂蜜の味
養蜂家
杉山 勲さん(82・愛名)
長年続けていた酪農を辞め、13年前に養蜂を始めました。蜂の病気や夏の猛暑など苦労もありますが、今は15箱を飼育し、採蜜からろ過、瓶詰め、梱包まで全て手作業で生産しています。蜂は季節の花の蜜を集めるので、春・夏・秋で味や香りが違います。味の違いを楽しんでみてください。
販売場所:夢未市、グリーンセンター、直売所

▽厚木の特産品の一つに
ラズベリー農家
山本 卓史さん(30・温水)
大学からラズベリーを研究し、2023年に就農しました。ラズベリー農家は全国でも珍しく、栽培方法や病気の対処方法など、まだ前例が少ないので、日々勉強しながら経験を積んでいます。そのまま食べてもおいしく、料理や洋菓子などにも使える万能な果物です。今後は市場にも出荷し、厚木の特産品の一つになれるよう頑張っています。

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