◆ボランティア制導入へ(旭小)
コロナ禍で、PTAの活動もさまざまな制限を受けてきた。旭小学校では元の形に戻すのではなく、3年ほど前から希望の声が強まっていた「ボランティア制」の導入を決めた。令和6年度からの移行に向け、規約の改定など、準備を進めている。
◇役員ノルマの減
ボランティア制では、本部役員と児童の登校時の安全を守る校外委員会を除き、「できる人ができるときにやる」という体制に変える。同校保護者と教職員の会、会長の向由季未さんは、「ボランティア制を取り入れることで役員の数が減り、『6年間で一人一役』という雰囲気のあった役員ノルマがなくなります」と話す。本年度、本部と5部門の運営委員会で全44人いた役員は、令和6年度から本部と校外安全委員会の全17人だけになる予定だ。「役員の中だけで選出していた活動を、保護者全体にお声掛けして、できる方にお願いする形に変わります」と説明する。ボランティアを募る具体的な活動は、広報紙作成や花壇整理、割ぽう着点検・カーテン洗いなど。また、学校が役員だけにお願いしていたちょっとしたお手伝いも、保護者全体から募れるようにする。役員だけにかかっていた負担の軽減も新しい体制の良さだ。
◇任意の子ども応援金
新たな体制では、活動資金である「会費」がなくなる。今後は「子ども応援金」として任意で集める方針だ。会員から集める「会費」は、学校での触れ合い活動費や、登下校路の安心安全に係る費用など、全児童のために使われている。もちろん、保護者が会員であるかどうかは関係ない。「保護者間での不平等をなくすためにも変更します」と向さんは狙いを話す。「子ども応援金」であれば、全ての保護者が児童のために使われる活動資金に協力できるようになる。
◇協力者を募る
来年度からの導入に向け、本年度は保護者に周知し、協力者を募る期間。新たな形は、保護者から肯定的に受け入れられている。
「本部役員からの一方通行ではなく、保護者の皆さんがやり取りできて、協力を呼び掛けやすい体制をつくりたいと思っています」と向さん。全保護者が参加しやすいよう、利用者の多いスマートフォンアプリ「LINE」で、登録ややり取りが簡単な「オープンチャット」機能の活用を検討中だ。「始めてみないと分かりませんが、保護者同士で気軽に企画などができるようにしたいですね」と展望を語る。
一方で、活動には参加しないと決め、学校・保護者とのつながりが薄くなってしまう人が出るのを心配する向さん。「活動の中で、子どもの学校生活を知ったり、保護者同士がつながったりできる時間の大切さを感じています。集まりやすい活動時間を設定するなど、工夫して協力を呼び掛けていきたいです」。
◇全てが子どもに還元
今は保護者のほとんどがフルタイムの仕事をしている時代。向さんは、任意団体のPTAに未加入の方がいるのは仕方がないと捉えつつも、社会的な流れに不安も感じている。「地域とのつながりや、安全に登校できる環境づくりは、一度なくなると簡単に戻せるものではないと思います。必要な役割は引き継がれ続けてほしいです」。
子どもたちの安全を守るために、定期的に直接顔を合わせて、地域とのつながりをつくる役割は本部役員や校外委員。衛生的な学校の環境を守るための割ぽう着点検やカーテン洗いなどの役割はボランティアで募った協力者。体制が変わっても、活動の全てが子どもたちに還元されることは変わらない。
◆旭小のボランティア制では何が変わるの?
◇これまでの体制
前役員が次の役員を決める。会員にアンケートを取り、役員をしたことがない方に一人一人声を掛ける。
会員A(役員):次の方を探すのが大変だ。
会員A:次の役員をお願いできませんか?
会員B:「6年間で一人一役」ですもんね。分かりました(忙しいのになあ……)。
◇ボランティア制
役員数が減り、役員ノルマも減る。これまで役員がしていた多くの活動は「できる人ができるとき」にする形に!
(活動ごとに募集がくる)
会員B:連絡はLINEの「オープンチャット」に届くのね。スマホですぐに確認できるし、話し合いも個別にできて便利だわ。
会員B:今回募集があった活動は協力できそう!参加してみよう。
会員A:今回は仕事で参加はできないけど、応援金で協力しようかな。
会員B:これからは、それぞれができる形で子どもたちのために協力できますね。
◆未来の教育環境を守りたい
・市PTA連絡協議会 伊澤(いざわ)克明会長
時代が変わり、全国的に保護者の学校との関わり方、考え方も多様化してきました。平塚でも少しずつですが、会員と活動資金の減少、役員のなり手がいないなどの課題に直面する単位PTAが出てきています。こうした状況を受け、今後の活動方針を決めるときに、まず考えてほしいと呼び掛けているのが「本来の役割は何か」です。1回制でできるボランティアと、一定期間同じ人が責任を持ってやるべき活動との違いを考えていく必要があります。行事の運営を工夫したり、子どもの異変に気づいたりするのは、一定期間責任を持ってやるからこそできることだと思います。
この数十年PTAは、教員と保護者、地域とのつながりをつくり、教育環境を整える役割を果たしてきました。もしなくなったら、多忙な教育現場の負担が、さらに増えてしまいます。多感な時期の子どもたちが過ごす、教育環境の質が落ちていくのは避けなければいけないのです。
◇単Pが運営しやすいように
市P連では、校長先生や単Pの会長との連絡会や研修会を、定期的に開いています。単Pが抱える課題を共有したり、解決につながる情報を得られたりする場となっています。単Pが孤立してさまざまな悩みを抱え込まないために、こうした情報交換の機会は大変重要です。市P連も単Pも、目の前の課題だけでなく、これからの変化を見越して備えることが求められていると思います。単Pと一歩離れた存在として、単Pが運営しやすくなるように、運営体制の在り方などを考え続けていきたいです。
問い合わせ:社会教育課
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