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[特集]医療的ケア児と暮らす(1)

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神奈川県平塚市

小児医療の進歩とともに、全国的に増えている「医療的ケア児」。新生児特定集中治療室などに長期入院した後も、自宅での医療的ケアが日常的に必要な児童だ。休むことなく続く世話は、家族の心身に大きくのしかかる。地域の中で安心して子どもと生活するために、今、家族が求める支援とは―。

◆増える支援の選択肢
「子どもの命に関わるので、24時間目が離せない」「きょうだいとの時間が取れない」医療的ケア児と生活する家族の切実な声が、市こども発達支援室くれよん(追分1-43)や、相談支援専門員のいる事業所に寄せられる。人工呼吸器による呼吸管理やたんの吸引、直接胃に栄養を注入する医療措置(胃ろう)を使った経管栄養などの医療的ケアは、子どもが成長してもなくなるわけではない。成長段階や家庭によって悩みはさまざまだ。市こども家庭課の池田健人主任は、「市では関係機関の協力もあり、医療的ケア児の家族が利用できる福祉サービスの選択肢が増えています」と話す。

◇希望の声と現場の課題
市は平成30年度から、関係機関や医療的ケア児の家族を含めた分科会などを開いている。意見交換をしながら支援の拡充につなげている。
その中で、まず運用に変化があったのが「放課後等デイサービス(放デイ)」だ。1カ月に利用できる放デイの基本支給量は、小学生が10日、中学生・高校生が15日となっていて、要件によって増えることがある。以前は保護者の就労状況が、主な要件だったため、「子どもの障がいの程度にも考慮して、支給量を増やしてほしい」という要望が分科会で上がっていた。池田主任は「医療的ケア児を受け入れられる事業所も限られていたので、支給量だけをすぐに上げることはできませんでした」と当時を振り返る。受け入れる側の事業所も、看護師不足など、さまざまな課題を抱えていた。

・医療的ケア児を受け入れている放課後等デイサービス
放課後や長期休みなどに子どもが自分でできることを増やせるように過ごす、療育の場を提供しているサービス。医療的ケア児を受け入れている事業所は市内に4カ所ある。利用調整はくれよんでしている。

◇切実な思いに応える
しかし厳しい状況の中、事業所は家族の声に応えた。令和5年4月に、「こども通園センター すくすくばあす」が広い場所に移転し、受け入れ人数を拡大。「先陣を切って協力してくれた事業所の存在は、本当に心強かったです」と池田主任は感謝する。
9月には「放課後デイGranny(グラニー)平塚」ができ、市内で医療的ケア児を受け入れられる事業所数が増えた。「受け入れ枠の拡大に伴い、市も医療的ケア児らの支給量を、国の定める原則月23日の上限まで、段階的に増やすことができました」。

・医療的ケア児らの放課後等デイサービス1カ月の支給量

(1)基本支給量(週2・3日)+1日に増加。月で4・5日多く使えるようになった。
(2)(1)に加えて、週の利用回数に上限のない全量支給に変更。週2日(月・木曜日利用)の場合、今年の6月は8日しか使えないが、残りの2日を別の曜日で使えるようになった。

◇広がる放デイの用途
医療的ケア児の送迎の有無など、利用できるサービスは事業所によって変わる。「土曜日も使える事業所が増えた効果は大きかったです」と池田主任。「きょうだいの運動会に、初めて参加できたという喜びの声がありました」。
また、かねてニーズの高かった入浴支援が二つの事業所で始まり、放デイで利用できるサービスが増えた。「入浴支援を使うと、家に子どもが帰ってきたら寝るだけの状態なので助かる」と、利用者からも好評だ。池田主任は「放デイをはじめとした、多岐にわたる支援を、必要としている方に届けられるように、今後も力を入れて支援体制を整えていきたいです」と背筋を伸ばす。

・平塚市の支援ネットワーク

(地域での生活をコーディネートした例)
Aくんは感染症にかかったまま退院することになった。相原さんは関係機関が集まる場で、地域での生活を検討した。相談支援専門員にはない感染症の知識もある看護師がペアにいたことで、対策をして利用できる支援につなぐことができた。

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