成長期の子どもたちが元気に学校生活を送るために欠かせない、昼食での栄養摂取。かねてニーズの高かった中学校完全給食が、9月から始まります。小学校からの9年間、栄養バランスの取れた適温の給食で、子どもたちの成長を支えていきます。
◆成長期の9年間を支える
近年、社会の変化から、食生活を取り巻く環境は大きく変わってきました。子どもたちの食をめぐっては、朝食の欠食・肥満・過度なダイエット、貧困による栄養不足などが問題視されています。「子どもたちの生活環境はさまざまです。その中で、昼食でしっかりと適正な栄養価を取ることは、成長期の子どもにとってとても重要です」と話すのは、市学校給食課の給食運営担当長で、栄養士の伊藤淑江さん(右下写真)。「小学校と同様の完全給食が、中学校でも始まります。成長に合わせた栄養価が取れる給食で、子どもたちの心身の成長を支えていきます」と続けます。
◇ミルク給食と補完策
平塚での給食の始まりは昭和25年。提供方式などを順次検討しながら、施設整備や内容の充実を進めてきました(下年表)。現在、全28の小学校で主食・おかず・牛乳の完全給食が提供されています。中学校では、完全給食を希望する声はかねてあったものの、子どもの安全に関わる学校施設の整備を優先するなどの理由から、実現するには難しい状況が続いていました。
中学校では、牛乳だけを提供し、各家庭から弁当を持参してもらうミルク給食が昭和37年に始まりました。その中で、保護者の負担軽減のため、平成27年度から、ミルク給食と業者弁当販売の併用を、15の中学校で始めました。伊藤さんは「当日の朝に注文できるので、お弁当の持参が難しい日でも、生徒の昼食を確保できるシステムです」と説明します。しかし、業者弁当の併用はあくまで補完策。毎日食べる想定はしていないため、バリエーションなどが限られています。保護者向けの業者弁当販売のアンケートなどでも、完全給食を望む声が、変わらず上がっていました。「社会情勢や市民からの要望の声を受け、市で検討を重ねた結果、令和元年から中学校での完全給食の実現に向けた事業が動き始めました」。
・平塚の学校給食の歩み
◇学校の日常にする準備
中学校の完全給食を開始するためには、運用面と施設面の体制を整える必要がありました。その一つが中学校の受け入れ体制です。市で始まる中学校の完全給食は、共同調理場方式(センター方式)。他市への視察や検討会を繰り返し、決まった運用方式です。15の中学校の給食を一括で調理し、給食時間までに配送します。「中学校によって、昼食を取る時間帯は、3限終了後だったり4限終了後だったりと異なりました」と伊藤さん。「学校ごとに違う昼食時間に合わせて、給食センターから配送するのは難しいため、給食時間を合わせる必要がありました」と振り返ります。
さらに、ミルク給食だった中学校の日課で、昼食に確保された時間は15分間ほど。配膳や片付けのある完全給食にはもっと時間がかかります。学校運営への影響を考えながら、日課の調整が進みました。「各学校と検討を重ねた結果、4限終了後に35分程度の給食の時間を確保できました」。
また、学校生活と調和した給食運営や学校給食センターの整備と同時に市が進めたのが、配送された給食を受け入れるための学校施設の整備です。生徒の安全を考えた搬入動線など、丁寧に学校と調整し、施設面の受け入れ体制も整えました。
◆中学校でも整う準備
市内の15の中学校に、配送された給食などを受け入れる「受入室」、クラスごとに積み替えた配膳ワゴンを各階に送る「小荷物専用昇降機」、給食時間まで各階で安全に給食を保管する「配膳室」が整備されました。受入室前は、配送トラックを止められる十分な広さがあります。
◇新しい日常に向けて、進む生徒への指導
各中学校では、9月2日(月)からの「給食を食べる」という新しい日常に向け、生徒にさまざまな指導をしています。ミルク給食とは違い、給食当番の生徒たちが盛り付けや片付けをする完全給食。給食を配膳する給食当番は、衛生面での準備が大切です。小学校の給食当番は、学校が用意する給食用白衣と帽子を着用していますが、中学校の給食当番は、各家庭で用意したエプロン・三角巾またはバンダナ・マスクを着用します。対象の家庭では、エプロン・三角巾またはバンダナ・マスクと、これら3点を入れる袋の準備をお願いします。
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