◆より安心・安全に届ける
すでに完全給食だった市内の小学校では、7校が校内にある単独調理場、21校が東八幡と田村にある東部・北部共同調理場で作った給食を提供していました。しかし、二つの共同調理場は、著しい老朽化や耐震性能不足などの課題を抱えており、対応が急がれました。
そこで検討されたのが、中学校給食の開始に併せて、2場を統合・移転するという方法です。伊藤さんは「安心・安全、安定的に給食を提供するために、21の小学校と15の中学校へ給食を届ける、新しい共同調理場(学校給食センター)の整備が決まりました」と話します。一つの調理場で、小・中学校の調理エリアを壁で隔てた「1棟2場方式」を取り入れたのは、県内初です。
◇高度な衛生管理
新学校給食センターは、学校給食衛生管理基準や、国際的な衛生管理の手法「HACCP(ハサップ)」の概念に基づいて、整備されています。既存の共同調理場よりも高度な衛生管理ができるようになります。
「平塚市では現場の徹底した衛生管理によって、給食の事故などは起きていませんが、今回、施設・設備が整ったことで、より衛生面で安心できる環境になりました」と伊藤さんは説明します。汚染の原因となる水を床に落とさず作業できる構造のドライシステム方式にしたり、納品や下処理をする区域と、下ごしらえや調理をする区域を明確に分けたりと、交差汚染などを防げる施設になっています。食物アレルギー対応食調理室や炊飯設備といった、今まではなかった設備も同センターの特徴です。
◇地元への愛着につなぐ
高断熱性、保温・保冷に優れた食缶を使い、適温で提供される給食。献立は、伊藤さんや小・中学校の各給食を担当する栄養士、学校の栄養教諭らが考えています。「栄養面はもちろん、子どもたちに喜んでもらえる献立を提供していきます」と伊藤さん。また同センターから届く給食を盛り付ける食器は、平塚らしいイラスト付き。食育を進める上で、地場産の食材の積極的な使用や、地域性のある献立も考えているそう。「9年間ある給食で食を学びつつ、平塚ならではの献立が記憶に残り、地元への愛着にもつながったら、うれしく思います」と期待を込めます。
◆栄養満点の献立作り
国の学校給食摂取基準を守りながら、食材・味付け、食事の量、調理方法など、さまざまな配慮をして作られる献立。給食では、普段の食事で不足しがちなカルシウムと鉄を多く取れるように考えられています。小学校給食を担当する石橋茜栄養士は「カルシウムも鉄も多く含む大豆や大豆製品を取り入れています。ゆでた大豆を揚げて青のりなどで味付けした『青のり大豆』が人気です」とおいしく食べてもらう工夫を話します。また野菜は、カルシウムを多く含む小松菜もよく使うそう。「平塚は小松菜が多く取れるので、年間を通して、スープや炒め物、サラダなど、たくさんの料理に使っています」と話します。小松菜以外にも平塚産米「はるみ」など、平塚産の食材を積極的に使っています。今年度は「ベジ太のジャージャー麺(平塚産小麦の麺・きゅうりともやしのあえ物)」などの平塚独自のメニューを提供していく予定です。
必要な栄養価は、子どもの成長につれて増えていきます。中学校給食を担当する釣谷沙弥香栄養士は「中学校の献立は、小学校の献立の量をただ増やすだけではなく、栄養バランスと食べやすさを考えながら、使う食材を追加したり1品増やしたり、工夫して作っています」と説明します。給食は、実際に食べながら栄養や健康、食文化などを学べる「生きた食育の教材」です。季節の食材を使ったり、日本の郷土料理や世界の料理などを取り入れたり、さまざまな献立で学びにつなげていきます。「食べた物が自分の体を作ります。自ら食事を管理し、豊かで楽しい食生活を送れるようになってほしいと思います」。
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