◆時代の移り変わりと都筑の仏像
横浜市歴史博物館 花澤明優美(はなざわあゆみ)
都筑の紅葉の名所である心行寺(しんぎょうじ)には、像高30センチメートルほどの小さな十一面観音像が伝わっています。江戸時代の地誌『新編武蔵風土記稿』に登場する、心行寺観音堂の伝定朝(じょうちょう)作の観音像が、この十一面観音像のことと考えられています。定朝は平安時代後期、11世紀に京都を中心に活躍した仏師です。この十一面観音像のなだらかに整えられた体つきの表現は、たしかに平安時代後期の仏像の特徴ですが、結い上げた前髪の生え際の線が正面真ん中で少し下がる形や、面長のやや厳しい表情は、鎌倉時代に入ってから見られるようになるものです。平安時代から鎌倉時代に移り変わった頃、12世紀のおわりから13世紀はじめあたりに造られたのだと考えられます。この像は頭から体まで一本の材木から彫り出し、中を刳(く)りぬかない古いつくり方を採用しています。古くからの仏像のつくり方を守っていた横浜の仏師も、新時代の新しい仏像の様式を取り入れるようになっていたことがわかります。
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