■認知症が当たり前になる時代
2025年には、高齢者の5人に1人が認知症になると言われています。認知症がきっかけで介護・介助が必要になった人は、在宅で25.4%、施設入居者では46.4%と、逗子市でも大きな割合を占めています。とはいえ、認知症になったからとすぐに何もできなくなったり、介護が必要になったりするわけではありません。
■認知症でも笑顔で明るい毎日
14年前、57歳のときに若年性アルツハイマー型認知症と診断された近藤英男さん。60歳まで仕事を続け、退職後は認知症を通じてつながった人たちと、さまざまな地域活動を始めました。認知症の人と家族、支援者が協力して一つのたすきをつなぐ「RUN伴(ランとも)+三浦半島」には、2016年の第1回から参加。また、子どもから高齢者まで誰もが一緒に演奏を楽しむ「フレンドリー楽団」を立ち上げます。常に面白いことを考え、仲間と楽しく生き生きと活動する近藤さんの姿を見た人たちは、「認知症のイメージが変わった」と驚いていたそうです。現在は症状が進み、以前のような活動はできませんが、デイサービスに通いつつ、家族や活動を共にした支援者のサポートを受けながら、住み慣れた地域で暮らしています。
■認知症をもっと知ろう、語ろう
逗子には認知症でも自分らしく、生き生きと暮らしている人たちがいます。周りには温かなサポートをする人たちがいます。認知症の人の暮らし、家族や地域の支援者の声を通して認知症について知り、理解を深めませんか。
参考:第9期高齢者保健福祉計画策定に向けたアンケート調査結果報告書(2023年3月)
■認知症って何だろう?
日本認知症学会専門医・指導医の資格を持ち、日頃から認知症の診察にあたる三壁先生に、認知症について詳しく話を聞きました。
◆interview
みかべ脳神経外科クリニック 逗子市認知症初期集中支援チーム 三壁敏雄医師
◇認知症にはさまざまな種類・症状があります
認知症は、脳のダメージなどで記憶力や判断力といった認知機能が低下し、日常生活に支障が出てくる状態の総称です。約7割がアルツハイマー型認知症で、他にもいくつか種類があり、それぞれ原因や症状も違います。また、同じ種類でも人によって進み方や出てくる症状も変わってきます。
問診やテスト、CT・MRIなどの検査で診断しますが、現在、慢性硬膜下血腫など一部を除き、認知症を根本から治す治療法はありません。進行を緩やかにする薬や症状に合わせた薬を処方する診療が一般的です。
◇気になることがあれば早めの相談・受診を
加齢による物忘れは、誰にでもあって当たり前。自立した日常生活が送れているなら認知症ではありません。ただ、認知症になる手前の軽度認知障害(MCI)という状態も考えられます。この段階では、適切な処置や対応で改善する可能性もあります。一方で、下の表にあるように、日常生活を送る上で困るような症状が出てくると認知症の疑いがあります。特に家族が「ちょっと違うな、おかしいな」と感じたら、まずはかかりつけの主治医に相談する、または、もの忘れ外来などの医療機関に足を運んでみてください。
◇認知症本人と家族が穏やかに暮らせるように
認知症と診断されたら、家族で抱え込まずに社会的支援なども積極的に活用するようにしましょう。介護保険申請をして、デイサービスに通うのもいいでしょう。最も気を付けたいのは、本人の自尊心を傷つけないことです。周りが怒って厳しい言い方ばかりしていると、本人が症状を取り繕うようになり、不安な気持ちからうつ病や引きこもるようになって進行が早まることがあります。家族はとても大変だと思いますが、できないことがあっても「それでいいんだよ」と受け入れてあげてください。そして、辛いことは行政や地域を頼り、私たち医者などにも相談してください。
一人一人が認知症の正しい知識と理解を持ち、温かい支援にあふれた社会になるといいなと願っています。
◆物忘れ、MCI
次のような症状があっても、自立した生活を送れている
・同じ質問をする
・置いた場所、しまった場所を忘れる
・蛇口の閉め忘れ、スイッチの消し忘れ
・会話がかみ合わない
・少し複雑な話は理解できない など
◆認知症
次のような複雑な動作ができず、日常生活に支障が出ている
・薬の管理ができない
・ATMでの出金ができない
・現金の支払いで小銭を使わない
・電車やバスを利用して目的地にたどり着けない など
*項目は目安で、医学的な診断基準ではありません。
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