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鎌倉の名宝114

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神奈川県鎌倉市 クリエイティブ・コモンズ

■白衣観音図(円覚寺蔵)
観音菩薩(ぼさつ)は、人々の前にその望まれるかたちに姿を変えて現れるとされている仏様です。今回紹介するのは、水墨技法で描かれた、円覚寺伝来の観音菩薩の画像です。
水辺に張り出した岩棚の上で、体をゆったりと預け、くつろぐ観音菩薩。厚みのある白い布を頭からすっぽりとかぶり、その垂れ下がった裾のはためく様子さえも優美でうっとりするほど。岩の周りに生い茂る竹も、柔らかにしなります。穏やかにほほ笑む観音の、そっと指さす先をのぞいてみましょう。うっすらと月の影が見えるでしょうか。このような、頭から布をかぶり、リラックスした姿の観音像のことを、「白衣(びゃくえ)観音像」と呼んでいます。
本図が描かれたのは、その様式から中国の元(げん)時代と考えられています。牧谿(もっけい)筆という伝承が付されていますが、牧谿は円覚寺の開山である無学祖元(むがくそげん)と師を同じくする法眷(はっけん)(仲間)として、同寺で重要視されてきました。
当時の鎌倉は、建長寺や円覚寺といった禅宗寺院を窓口として、中国の宋(そう)元文化を多分に受け入れていました。本図はまさに、憧れの宋元文物を手本に作られた、豊かな水墨表現を伝えてくれる作品と言えるでしょう。
ところで、本図には元来一具(いちぐ)であったと伝わる絵画があります(『新編相模国風土記稿(さがみのくにふどきこう)』)。
それは、建長寺に残る二幅(にふく)の猿猴図(えんこうず)です。現在は、釈迦(しゃか)三尊像と猿猴図の三幅(さんぷく)一具として納められています。試みにこの白衣観音像と猿猴図を並べてみると、見事な大幅(たいふく)の壮観さ、そして水墨表現の調和から、禅寺の空間を設(しつら)えるにふさわしいことがよく分かります。
(市指定文化財 絹本墨画(けんぽんぼくが) 縦一五四・二センチ、横九三・二センチ)
[鎌倉国宝館]

白衣観音図のほか、建長寺の水月(すいげつ)観音像や猿猴図は、6月8日〜7月15日に開催の同館「かわいいたからもの―学芸員の偏愛事情―」で公開予定です(詳細は9面)

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