■特集 紫式部ゆかりの地
▽古代の敦賀
敦賀は交通の要衝といわれ、古くから大陸との玄関口として、日本海の海運と琵琶湖の水運を結ぶ結節点として栄えてきました。
敦賀が古くから重要な地であったことは、数々の遺物・文献からうかがえます。5世紀中ごろの向出山1号墳(むかいでやまいちごうふん)※から、金メッキの甲冑がみつかっています。これは「倭の五王」の時期、すなわち大陸との交流が盛んであった頃に敦賀が対外的な港であったことを示す出土品と指摘されています。
遣唐使や遣隋使は日本の歴史上でも有名ですが、日本はそれ以外の国とも交易をおこなっていました。その一つが、8~10世紀に中国東北部~朝鮮半島北部にかけて栄えた渤海(ぼっかい)です。神亀(じんき)4年(727年)に初めて来航した渤海使(ぼっかいし)は、以降34回にわたって来日し日本と交易を行いました。日本海沿岸に到着した渤海使を迎えるために越前国の敦賀には松原客館(まつばらきゃっかん)が置かれたといいます。松原客館の場所は未だわかっていませんが、日本海沿岸の各地へ来着した渤海使を都へと送迎する重要な役割を果たしていました。
渤海は926年に滅びますが、その後日本へは中国大陸で960年に建国された宋の商船がやってくるようになりました。
※向出山1号墳…中郷地区に所在する敦賀最大の古墳。国指定史跡
▽平安時代中期の敦賀
紫式部の時代、長徳(ちょうとく)元年(995年)に若狭国に宋から唐人70人余りが到着したときも、まず越前国に移動・滞在させており、日本海沿岸に到着した外国船は越前国が対応することとなっていたようです。これは以前に渤海使の対応をしていたのが越前国であったためと考えられます。
紫式部の父、藤原為時(ためとき)は長徳2年に越前守(えちぜんのかみ)に任命されています。前年に若狭に到着した宋からの客人の対応のため、漢詩に堪能な為時が任じられたと思われます。為時が宋人に詩文を贈った記録も残されています。
その後も、20回近い到着の記録が残っており、錫(すず)の交易、写経の依頼などが行われていました。平安時代の敦賀は外国との窓口として、栄えていたのです。
■コラム 為時(ためとき)と宋人の交流
覲謁之後 以詩贈太宋客羌世昌 藤為時
六十客徒意態同 獨推羌氏作才雄 來儀遠動煙村外 賓禮還慙水館中
晝被雷奔天不雨 彩旗雲聳地生風 芳談日暮多殘緒 羨以詩篇子細通
『本朝麗藻(ほんちょうれいそう)』巻下贈答※
為時が長徳元年に宋から来た一人、羌世昌(きょうせしょう)へ贈った詩。「水館」での交流を喜び、世昌の才能をほめたたえる内容です。「水館」と書かれていることから、この詩の舞台は海に面した敦賀であったことがわかります。
※本朝麗藻(ほんちょうれいそう)…平安時代中期の漢詩文集。「巻下贈答」の項目に記載されている。
■コラム 深山寺経塚(みやまでらきょうづか)※出土の唐物(からもの)
平安時代後期に造営が始まった深山寺経塚群において、青白磁(せいはくじ)の皿や中国の湖州で作られた銅鏡などの多数の「唐物」が出土しています。
当時の敦賀に宋から多くの貴重な品々(唐物)が輸入されたことがわかります。
※経塚…お経を書いた巻物を壺などに入れて埋めた塚。刀や鏡などが共に納められることが多い。
※深山寺経塚…東郷地区の深山寺区で発見された経塚。
▽紫式部の往来した道
知りぬらむ往来にならす塩津山世に経る道はからきものぞと
紫式部(『紫式部集』)
紫式部が越前国府との往来で通った道としては、深坂越(ふかさかごえ)(塩津越・深坂古道(ふかさかこどう))、木ノ芽峠越(きのめとうげごえ)(木ノ芽古道(きのめこどう))が考えられます。深坂越は、追分から近江塩津へと抜ける古道です。江戸時代初頭に現在の国道8号ルートでもある「新道野越(しんどうのごえ)」がつくられると交通量は減少するものの、明治初頭まで使われた主要な道でした。
木ノ芽峠越(木ノ芽古道)は、平安時代初め、天長9年(830年)にひらかれ、以来1,000年余りにわたって敦賀と越前を結ぶ幹線道路として使われた歴史の道です。式部以外にも、道元、親鸞、蓮如、芭蕉など歴史上の人物が多数行き来しました。
■TOPICS
1.光る君へ 越前 大河ドラマ館 敦賀市民限定特典があります!!
越前市の武生中央公園で、北陸初の「大河ドラマ館」が開設されています。ここでしか見ることのできない限定映像や衣装展示など、ドラマの世界観を楽しむことができます。
主催:紫式部プロジェクト推進協議会
・敦賀市民限定で入館料が大人100円、小人50円割引されます!(8月31日まで)
・来館者記念証をプレゼント!
※券売機横にいる大河ドラマ館スタッフに、運転免許証や健康保険証など、住所がわかるものを提示する必要があります。
2.大河ドラマ「光る君へ」パブリック・ビューイング開催!
5月26日、大河ドラマ「光る君へ」越前編のスタートを記念し、粟野公民館で大河ドラマのパブリック・ビューイングが開催され、約100人が参加しました。大河ドラマが始まると、会場は静まり返り、参加者たちは食い入るように大画面に見入っていました。
当日は、「平安時代の敦賀について」と題し、気比史学会の糀谷好晃(こうじたによしあき)会長によるミニ歴史講座も開催され、参加者たちは大河ドラマをより楽しむことができました。
問合せ:
文化振興課【電話】22-8152
観光誘客課【電話】22-8128
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