■03 ASUWA RIVER and COMMUNITY
足羽川とまちの公共空間
▽治水、利水、そして親水へ
これまで河川には、水害から市民を守るための「治水」、発電や農工業用水などを工面する「利水」の観点から、さまざまな規制が設けられてきました。
しかし、河川は本来、公共空間として活用できる皆さんのための場所です。水に親しむことで精神的、文化的な満足を得る「親水」の観点で、潜在的に大きな可能性を秘めています。
▽今後の福井のまちと足羽川
令和4年に、福井県、福井商工会議所、福井市の三者が共同で、福井のまちなかの将来像を構想する「県都グランドデザイン」を策定しました。そこには、足羽川の周辺を、アウトドアレジャーやスポーツ、ライトアップされた水辺空間の散策など、多様な楽しみ方ができる「通年型親水アクティブパーク」にすることが示されています。
長い間、河川は、道路や公園などと同じく、法律によって、そこを管理し占有できる主体が、国や地方自治体などに限られてきました。歴史的に人の暮らしと深く結びついてきた川を、再び身近なものとして自由に活用したい。そうした市民からの声が高まり、平成23年に法律が改正され、民間事業者などが河川敷地を利用できるようになりました。
足羽川では、第三セクターのまちづくり福井(株)が、福井県から許可を得て、一般の個人・団体に河川敷の一部を貸し出す「足羽川AQUA(アクア)テラス」を運用しています。
少人数のグループでも大きなイベントでも利用することが可能。屋台やケータリングカーなどを出店することもできます。特集の冒頭で紹介したミズベリングも、この足羽川AQUAテラスを利用したイベントです。
また、今年3月には、足羽川周辺のにぎわいの拠点として、幸橋北詰近くに「ヨリバ」がオープンしました。カフェや、イベント時にバーベキュー、水上アクティビティなどが楽しめるほか、日常的にみんなが気軽に集まる「寄り場(ヨリバ)」として利用できる施設です。
ヨリバが誕生してから約5か月。この間に、早くも多くの人たちがここに集い、親交を深め始めています。
犬の散歩や通勤通学などで川沿いを通る人が、ふらっと立ち寄って顔なじみとおしゃべりしたり、ランニングやサイクリングをする人が、ロッカーやシャワーを利用したり。
福井駅から近いためか、高校生、大学生などの利用者も多く、若者たちが自発的に企画したイベントなども活発に開催されるようになっています。
▽再び動き出した足羽川とまちの関係性
しばらく眠っていた足羽川と福井のまちの関係性は、ここにきて再び動き始めたようです。この場所には、福井のまちと人をつなぎ、コミュニティの発生を促す力があるのかもしれません。
最も身近なようで、これまでは意外と疎遠だった足羽川。今度、ちょっと立ち寄ってみてはいかがでしょう。きっと新しい出会いがありますよ。
●まちなかの小さな非日常
まちづくり福井(株) 山西伴幸さん
山西伴幸さんは、足羽川AQUAテラスやヨリバを担当する「まちなか水辺のコーディネーター」です。坂井市三国町の出身で、子どものころはよく海岸で遊んでいた山西さん。水辺の楽しさや、水辺に集う人たちから学ぶことの重要さを、今の若い人に伝えたいと言います。山西さんは、これまで理学療法士として医療的ケア児のサポートに携わってきました。その経験から、「人が健康で幸せに暮らしていくためには、ときに日常を抜け出し、水辺などの自然の中で過ごすことがとても大事」だと言います。「普段の空間や景色、時間の中で過ごしていると気持ちはどうしても同じようなものごとに向かいがち。福井駅からほど近いまちなかに、自然あふれる足羽川のような場所があるのはラッキーなこと。ぜひ、足羽川で小さな非日常を楽しんでほしい」と語ってくれました。
●開放的な空間が育むコミュニティ
(株)オリナス代表取締役 加藤瑞穂さん
地域に関わり、市民の健康やまちづくりをサポートする看護師、保健師、コミュニティナースとして活躍する加藤瑞穂さん。ヨリバのカフェを担当し、そこでの空間づくりやコミュニティづくりを支えています。
メンバー同士で内に閉じてしまうのではなく、周囲や社会へと広がっていくようなコミュニティを大切にしている加藤さん。ヨリバでは、そんな理想的なコミュニティが、若者を中心にすでに動き出しているそうです。「足羽川のほとりという開放的な立地と、ヨリバを支えてくれている皆の寛容な雰囲気がきっとそうさせているのでは」と言います。
「私のおすすめは、足羽川の夕焼け空の景色。本当にすごくきれいなので、学校や会社の帰り道などにぜひ立ち寄ってみてほしい」と笑顔で話してくれました。
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