■『小粕窯跡(こかすかまあと)』編(1)
E子:こんにちは。
学H:こんにちは。今回は前回に予告した通り、神明ヶ谷須恵器窯跡(しめがたにすえきかまあと)とは別の須恵器窯を見ていきます。
E子:今度はどこの須恵器窯ですか?
学H:織田の鎌坂に所在する小粕窯跡です。
小粕窯跡では昭和二〇年(一九四五)頃の開墾当時以前から付近で瓦片が見つかっていたため、窯の存在があることが知られていました。平成二年(一九九〇)度に田畑が整備改良されることになり、本格的な調査に至りました。田畑の上に続く丘陵からの土取りにより遺跡が消滅する危険性から、窯の有無を確認するために、平成二年六月~八月にかけて試掘調査が行われました。
E子:試掘調査って発掘調査とは違うのですか?
学H:試掘調査では、埋蔵文化財包蔵地に該当する開発予定地に小さな調査区を数か所設定して掘削を行い、遺構や遺物があるかどうかの確認を行います。遺構や遺物の存在が確定したら、「本掘(ほんくつ)」と呼ばれる本格的な発掘調査となります。
小粕窯跡での試掘調査では、窖窯(あながま)の焚口部や焼成部の一部、軒平瓦片などの多数の瓦片、須恵器片などが確認されました。これらの成果によって遺跡の存在が確実視されたため、平成三年(一九九一)七月~一二月にかけて発掘調査が行われました。
E子:発掘調査とはただ掘るだけではないのですね。
学H:その通りです。また、発掘調査は掘って終わりではなく、調査後に記録を残すことに大きな意義があります。遺跡を初めとする文化財は国民共通の財産であり、調査結果を皆さんに知ってもらうために遺跡の調査報告書を作ったり、遺物の展示をおこなったりしています。これらの作業を整理作業といいます。
小粕窯跡の調査成果は、平成三年三月に『小粕窯跡試掘調査概報』、平成六年(一九九四)三月に『小粕窯跡発掘調査報告書』として刊行されました。
今回は小粕窯跡の発見と発掘の経緯についてみていきました。次回は窯について紹介していきます。
[引用・参考文献]
『小粕窯跡発掘調査報告書』織田町教育委員会一九九四
『越前町織田史(古代・中世編)』越前町教育委員会二〇〇六
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