■もてなしの器(うつわ)・漆塗(うるしぬ)りの皿―大宰府条坊跡第168次調査(客館跡)出土8世紀後半~9世紀初頭―
西鉄二日市駅のすぐ北西に所在する「客館跡(きゃくかんあと)」は、奈良時代~平安時代の前半にかけて、外国から来た人々などを宿泊させた施設があった遺跡です。ここは、「特別史跡大宰府跡※」の一部分として、平成26(2014)年10月6日に追加指定され、本年でちょうど10年となります。
さて、客館跡一帯での最初の発掘調査は平成7(1995)年にさかのぼります。朱雀3丁目での市道の拡幅にともないおこなった発掘調査(大宰府条坊跡第168次調査)で、幅8m・東西延長200mと、古代の都市遺跡・大宰府条坊跡の中でこれほどの広範囲を調査したのはこの時が初めてでした。調査では、条坊の中央を通るいわゆる朱雀大路の東側側溝と、左郭(さかく)1坊路(ぼうろ)が検出され、現在では通説となっている条坊区画の規模が約90m四方であることを示す要素が確認されるなど、大宰府条坊の研究の歴史の中でもターニングポイントとなる発掘調査でした。
右の写真は、その調査での出土品の1つ、漆塗りの皿です。調査区の西の端近くで見つかった8世紀後半~9世紀初めの井戸の跡から出土したものです。材料はケヤキで、高さ1.12cm、推定される元の大きさは直径18cmです。内面には暗い赤茶色の漆が、外面には黒色の漆が丁寧に塗られています。現状の器の厚さは底の部分が2.5~3mm、口の部分が1.5~2.5mmと薄く仕上げられており、製作技術の高さをうかがわせる一品です。
出土した当時は、単に大宰府の上級官僚が使ったものとして理解されていた当資料でしたが、その後にここが客館だとわかったことで、客館でのもてなしに使用された器と位置づけることができました。唐(とう)の陶磁器や新羅(しらぎ)の佐波理(さはり)といった高級食器と並んで、メイドインジャパンの美しい漆器にも料理が盛られ、客人の目を楽しませていたのでしょうね。
文化財課
遠藤(えんどう)茜(あかね)
※大宰府政庁を中核とする、九州をとりまとめ、外交の窓口も務めた古代の大きな役所の遺跡です。
※写真は本紙P.32をご覧ください。
記事の漆塗りの皿は、現在文化ふれあい館で開催中の「まるごと太宰府歴史展2024」で展示しています。ぜひ現物を見に来場してください。
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