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太宰府の文化財(470)

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福岡県太宰府市

■蘭亭曲水図屏風(らんていきょくすいずびょうぶ)

本市では元号「令和」を迎え5年が経過しました。令和の典拠が、天平(てんぴょう)2(730)年に大宰府で催された梅花の宴を記した『万葉集』「梅花の歌」三十二首の序文にあることはご存じの人も多いかと思いますが、この原典と呼べる故事をご存じでしょうか。
梅花の宴からさかのぼること377年前、中国東晋(とうしん)時代の永和(えいわ)9(353)年3月3日、浙江省会稽山(かいけいさん)の蘭亭に、政治家であり書家である王羲之(おうぎし)が文士41人を集めて禊(みそ)ぎを行った後、川に浮かべた盃(さかずき)が自らの前に流れ来るまでに詩を詠む曲水の宴を催しました。ここで詠まれた詩を集めて王羲之が書いた序文が、古来名高い「蘭亭序(らんていじょ)」。王羲之の書の最高傑作とされ、奈良時代の官人にも教養として知られていました。
梅花の宴の序文は大伴旅人(おおとものたびと)らが蘭亭序を参考に作ったとされ、令和の典拠となる一節「初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和(かぜやわら)ぎ、梅(うめ)は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き、蘭(らん)は珮後(はいご)の香(かう)を薫(くん)ず」は蘭亭序の一節「天(てん)朗(ほが)らかに気(き)清(きよ)く恵風(けいふう)は和暢(わちょう)せり」と類似することが指摘されます。
曲水の宴は、奈良時代には日本に伝わり平安時代にかけて宮中で開催されました。太宰府天満宮でも天徳(てんとく)2(958)年に始まり、中世に途絶えますが、昭和(しょうわ)38(1963)年に復活し、現在も神事として行われています。
本作品は、江戸時代後期に活躍した太宰府在住の町絵師齋藤秋圃(さいとうしょうほ)が嘉永(かえい)4(1851)年頃に作成した六曲一双の屏風です。梅花の宴の原典であり、太宰府天満宮ともゆかりのある蘭亭曲水の場面を、太宰府の絵師齋藤秋圃が制作した、太宰府と繋がりの深い作品です。
令和改元五年を記念し、8月10日(土)から開幕する「まるごと太宰府歴史展2024」で特別展示します。ぜひ来場してください。

文化財課
木村 純也(きむら じゅんや)

▽展示期間
・右隻[蘭亭図]
8月10日(土)~9月22日(日)
・左隻[曲水図]
9月24日(火)~11月4日(月)

齋藤秋圃筆
《蘭亭曲水図屏風》
紙本着色
各177cm×423cm
嘉永4年(1851)頃
個人蔵

▽展示場所
太宰府市文化ふれあい館

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