文字サイズ
自治体の皆さまへ

太宰府の文化財(472)

42/43

福岡県太宰府市

■鏡を包んだ葛布(くずふ)市指定文化財第31号 菖蒲浦(しょうぶがうら)第1号墳出土品

かつて高雄2丁目の丘陵には、菖蒲浦古墳群がありました。この古墳群は昭和50年に太宰府南小学校の建設に伴って調査され、このうちの1号墳からは、青銅製の鏡が布の付いた状態で見つかりました。今回はこの鏡に付着した布に焦点を当てます。
鏡が副葬されていた古墳は、古墳時代中期(約1600年前)に造られた直径約(ちょっけい)15~16mの円墳です。埋葬施設の1号主体部は割竹形木棺(わりたけがたもっかん)で、棺の中は赤色顔料が塗られており、遺体とともに鉄剣(てっけん)・鉄斧(てつおの)・勾玉(まがたま)など、多くの副葬品が納められていました。この中に、布で包まれた鏡がありました。
出土した鏡は方格規矩鏡(ほうかくきくきょう)といい、錆によって布が土に還らず、鏡面・背面に付着した状態で見つかりました。この布を観察してみると、錆により緑色に変色していますが、布目はとても粗く、糸の筋がよく見えます。この布について調べた結果、葛を原料としている可能性が高いことが分かりました。葛とは山野に自生するマメ科の蔓性(つるせい)植物です。根にはでんぷんが多く含まれ食されるほか、繊維質が強いため布として丈夫であり、夏の肌着など今日まで使用されています。鏡に付着した葛布は、葛皮の繊維を柔らかく処理した後、紡いで糸にしたようです。糸は経糸(たていと)・緯糸(よこいと)とも右によられ、その糸を編んで粗い織物として鏡を包んでいます。
古墳時代、鏡は物を映すことよりも、権力を表すもので、祭祀に用いられる道具として重要でした。そのことから、鏡も布で包んで丁寧に副葬されたと考えられます。鏡に布が付着している例は、奈良県の桜井茶臼山(さくらいちゃうすやま)古墳や兵庫県の西求女塚(にしもとめづか)古墳など各地で確認されており、葛布以外の絹などで包まれていたことが分かっています。その中で、本市の菖蒲浦第1号墳出土のものは、国内では現存する最古の葛布と考えられています。
この古墳から出土した布は、当時の鏡の保管方法や副葬時の状況を知ることができる、織物史上でも貴重な資料です。この鏡を包んだ葛布は、現在文化ふれあい館で開催中の「まるごと太宰府歴史展2024」で9月1日(日)~29日(日)まで特別展示しますので、ぜひ来場してください。

文化財課
中村(なかむら)茂央(しげお)

■「まるごと太宰府歴史展2024」開催中(11月4日(月)まで)

▽関連イベント
過去に開催した「『大宰府史跡これからの100年~太宰府の源流と未来を語る~』のシンポジウム『古代大宰府の客館と国際交流』」の収録映像を上映します。
日時:9月21日(土) 午前10時~正午(当日先着順)

▽文化財の三次元データを公開中
「Sketchfab(スケッチファブ)」で、今回紹介した鏡も含めて市指定文化財の三次元データを公開しています。市ホームページ(ページID:30679)からもアクセスできます。アンケートへの協力もお願いします。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU