地域で話題になっている人や団体、企業などを紹介するシリーズ。
3号連続にわたり「秋月藩黒田三職の会」の皆さんを紹介する特別企画の第3弾。
11月2日(土)に開催される「秋月三名君フォーラム」に向けて、秋月藩の伝統産業を紹介します。
■Interview
筑前秋月和紙処 4代目
井上賢治さん
創業は明治時代の初めごろ。秋月地区の和紙工房「筑前秋月和紙処」の4代目。平成13年に帰郷し、家業を継ぐ傍らで秋月の歴史や文化を探求し続ける。
秋月藩に伝わる伝統産業である葛、川茸、和紙の職人による「秋月藩黒田三職の会」や「秋月鎧(よろい)揃え保存会」としても活動。秋月の伝統を次世代へ伝える取り組みも行う。
■伝統産業が残る「意義」そして、残す「意味」
◇秋月唯一の和紙工房として
秋月和紙は、秋月藩8代藩主で秋月三名君の一人でもある黒田長舒(ながのぶ)公が、藩の産業として奨励したことで広がったといわれています。筑前秋月和紙処の創業は明治時代の初めごろ。最盛期には20軒ほどの紙屋がありましたが、その後陰りが見え、昭和40年代には当店を含めすべての紙屋が廃業になりました。
秋月に10年間ほど紙屋がない状態が続きました。「地元の伝統工芸がこのまま無くなるのはさみしい」と住民の声を受け、先代である父が一念発起。和紙づくりを再開し、秋月唯一の和紙工房として現在に至ります。
◇伝統の技を受け継ぐ
私は元々家業を継ぐつもりはありませんでした。大学卒業後、就職し、東京、山梨、北海道など転勤で各地を回りました。さまざまな出会いの中で感じたのは、「秋月」を知っている人の多さでした。全国各地で私のふるさとを耳にし、驚きもありましたが、ふるさとへの誇りを持ち、その良さを再認識するように。30代後半には帰郷し、秋月和紙の伝統技法を受け継ぐ決心をしました。
紙づくりの技法は、紙が中国から日本に伝わった1400年前からほとんど変わっていません。和紙づくりは職人の世界。父の技法を見て学び、感覚を養っていきました。和紙を購入いただくお客さんは全国にいます。「書きやすい」「この紙でないと」といった声を聞くとやりがいや喜びと同時に、秋月和紙を絶やしてはいけないとの使命感を感じています。
◇目指すは純秋月産和紙
秋月に帰郷した時から、郷土史などを読み込んで、歴史を学んできました。その歴史をつないでいきたい思いから、有志と共に「秋月鎧揃え保存会」や「秋月藩黒田三職の会」を発足。少しでも多くの人に秋月の歴史を知ってもらうために、活動を続けています。
そんな活動を続ける中で、葛、川茸、和紙などが現代まで残る「意義」を感じ、絶やしてはいけない「意味」が分かるようになりました。今後も変わらず、和紙を作り続けていきます。そして一つの夢も。それは和紙の原料となる楮(こうぞ)を秋月産で賄い、和紙を作ることです。“純秋月産和紙”を目指し、これからも紙を漉(す)きます。
■筑前秋月和紙処(秋月424-2【電話】25-0517)
店内では、ステキな和紙や和紙でできた作品を購入できます。昔ながらの伝統的手法での紙漉見学や体験も。井上さんから紙漉きや原材料について、秋月の歴史を交えながら教えていただけます。紙漉き体験(要予約)
料金:1人1300円 ※団体時10人以上は要相談
※Instagramの詳細は本紙またはPDF版をご覧ください。
■伝統産業を守り、伝える
秋月藩黒田三職の会では、葛、川茸、和紙の歴史や秋月の魅力を伝えるワークショップなどを定期的に開催しています。ワークショップ終了後には三職それぞれの特色を生かしたお土産も。ぜひ一度参加してみませんか?
※Facebookの詳細は本紙またはPDF版をご覧ください。
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