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祝 堀川が県指定史跡に

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福岡県水巻町

吉田東から北九州市八幡西区大膳(だいぜん)にまたがる堀川の切貫(きりぬき)(車返(くるまがえし)切貫)の区間が、令和6年3月29日に中間市の福岡県指定史跡(以下、「県史跡」)「中間唐戸(からと)の水門」の追加指定という形で県史跡に指定されました。

■堀川の歴史・近世
堀川は、17世紀初めに筑前福岡藩の藩主黒田長政(くろだながまさ)が遠賀川の洪水の防止や田畑の灌漑(かんがい)、物資の輸送を目的に、洞海湾までの分水路(ぶんすいろ)を計画しましたが、長政の死去で中止してしまいます。
120年後の宝暦(ほうれき)年間(1750年から1762年)に工事が再開され、中間(現中間市唐戸)・寿命(じめ)(現八幡西区楠橋(くすばし))に二つの水門を整備し、文化元年(1804年)に完成しました。この工事で一番の難所が車返でした。長さ456メートル、幅6・3メートル、高さ最大14メートルの岩盤を9年の歳月をかけて切り開いたものです。
文政(ぶんせい)4年(1821年)の『筑前名所図会(ちくぜんめいしょずえ)』の「吉田切抜の圖(ず)」では、切貫が樋(とい)のようだと表現して、船が行き来している様子が描かれています。
また、別の文献には切貫は屏風(びょうぶ)を立てたようだとほめたたえられています。
嘉永(かえい)元年(1848年)の『湯原日記』には、洞海湾から堀川の吉田村を通過し遠賀川へ向う様子が書かれ、船が物資だけでなく人も運んでいたことが分かります。当時の車返切貫は、風景のすばらしい観光地として多くの人が訪れていました。

■堀川の歴史・近代
明治以降になると、堀川は石炭の輸送路として昭和初期まで繁栄しました。
戦後は宅地化が進み、田畑も減り、灌漑用水としての機能を失いました。川と人との関わりが薄れていき、生活雑排水が流れ込んでヘドロ化し、淀みの悪臭や洪水が発生するようになりました。そのため、治水・浄化対策として、行政が主体となって河川改修を繰り返してきました。
一方で、堀川の歴史を伝える取り組みとしては、昭和37年(1962年)に県立折尾高校に保存している小型船「川ひらた」が県指定文化財となり、翌年同校の郷土史クラブが「堀川運河調査研究報告」として堀川の現状と課題をまとめました。
また、同じ頃、北九州市の小学4年生の社会科副読本『よいこの社会科』では、教材として取り上げられています。
さらに、昭和46年(1971年)に寿命の唐戸が北九州市指定文化財となり、昭和54~55年(1979年~1980年)に北九州市教育委員会が文化財記録映画「堀川の歴史」を制作しました。
そして、昭和58年(1983年)に中間唐戸が県指定史跡になります。
ところが、昭和61年(1986年)に中間市岩瀬で堀川と曲川が立体交差していた部分(曲川伏越(ふせこし))が上流部の洪水が原因で撤去されることになり、堀川が分断され、川の流れがなくなりました。

■堀川の歴史・平成以降
平成に入ると、堀川歴史公園が開園するなど、河川環境が整ってきた中、繁栄当時の様子を残している車返周辺にも工事の手が及ぶことになり、保存運動がおこりました。
行政・保存団体・住民で話し合いましたが合意に至らず、工事は着工され、堀川(北九州市内)の川床の一部が掘削されました。
この間にも平成15年と17年に文化財調査が行われ、線刻文字などの貴重な史跡が発見されています。
その後は住民と行政が協働し、河川の浄化運動や清掃活動に取り組んだ結果、水質が改善され、史跡ガイドやシンポジウムなどもさかんになってきました。
こうした継続的な取り組みが評価され、平成19年に経済産業省から「近代化産業遺産」に認定されました。
さらに平成27・28年に、流域の北九州市・中間市・水巻町が協力して「堀川文化財総合調査」を実施した結果、多角的な視点において、専門家から再評価されました。
特に評価された点は、車返の工事において、複数の技法を駆使して石割や石材の切り出しが行われたことや、江戸時代に開削された切通しの中では全国一長いこと、洪水を防御するための二つの水門は強固で、土木史上では非常に珍しいことなどです。
平成31年2月、シンポジウム「遠賀堀川の魅力とまちづくり」では、堀川文化財総合調査の成果が出席者に紹介されました。
同年には文化庁の「歴史の道百選」に追加選定され、将来保護すべきものとして位置づけられました。こうした動きが今回の福岡県史跡指定につながったものと思われます。
切貫が最後まで文化財指定から取り残されていましたが、ここまで到達するのに長い時間がかかりました。この間多くの人々の支援、協力、地道な活動なくしては実現できませんでした。今後は、この史跡を大切に守り、地域の活性化につながることを期待しています。

■堀川吉田・大膳間切貫展
福岡県史跡指定までの歩みを振り返ります。夏休みの自由研究に来てみませんか。
みんなも来るっちゃろ?
とき:7/20(土)~8/31(土)
ところ:歴史資料館
費用:無料

問合せ:歴史資料館

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