■直方の炭鉱の歴史
第9回 旧筑豊工業(鉱山)高校所蔵の教材写真
◇筑豊鉱山学校で使用された教材写真
筑豊鉱山学校の授業で使用された教材写真九百五十枚については、他の所蔵文化財が保管されている福岡県立の九州歴史資料館(小郡市)ではなく、九州大学附属図書館付設記録資料館産業経済資料部門で保管されていますが、移管に関する記録がなく経緯は不明です。
◇教材写真の状態
写真は紙でなく破損しやすいガラス板の状態で保存されていたので、研究・発表の便宜のため同館により全部スライドフィルム化され、併せて紙に焼き付けて全七冊のアルバムに収納されています。
後述する九大エネルギー史研究への投稿は同館から借用したガラス板・スライドフィルム・紙写真の三者を突き合わせて整理しました。
◇教材としての幻燈機使用の可能性
一枚の写真では多数の生徒に見せることはできず、幻燈機が使用された可能性がありますが、機材・記録が存在せず不明です。
戦前戦中の在校生に聞いたところでは視聴覚教育を受けた記憶がなく軍事教練のため、それどころではなかったと思われます。
◇スライドフィルムの現状
メーカーが二十年前に生産をやめており、今回の作業でも映写機の確保に苦労しました。
◇教材写真の作成時期
記録資料はありませんが新聞記事等の日付から昭和一桁の末頃、戦時統制経済が強化される以前の作成使用と思われます。
◇写真の種別
一、炭鉱における安全教育関係
・安全週間行事
・保安人の心得
など、安全教育、安全運動に関する教材が多数あります。
二、技術教育関係
・炭鉱の写真
・炭鉱機械器具の写真
・採鉱法に関する図面
・機械類の図面
・各種の数表
の他に図面や地質図もあります。
三、一般教養関係
・軍事資料(陸海軍)
軍事教育で使用か。
・赤穂義士(紙芝居)
修身教育で使用か。
・五庄屋の話(筑後川灌漑工事の紙芝居→修身教育)
・通潤橋工事(紙芝居→修身教育)
・全国各地の名所(絵葉書的→地理教材か)
など内容は多岐にわたっており技術専門学校の補助教材として使用されたわけで極めて興味深い。
◇九大エネルギー史研究に掲載
教材写真の詳細な全体像については前号で紹介した通り「エネルギー史研究」(九州大学附属図書館付設記録資料館産業経済資料部門が現在も毎年編集発行)の2012年第27号に掲載されていますのでインターネットで検索してみてください。
文 榊 正澄
文化財に関する問合せ:文化・スポーツ推進課社会教育係
【電話】25-2326
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