◆優しさを伝えるケア技法「ユマニチュード」~認知症の人とのコミュニケーションのために~
ユマニチュードは「人間らしくある」という意味を持つフランス語の造語で、認知症など介護を要する人とスムーズにコミュニケーションを取るための、フランス生まれのケア技法です。
ユマニチュードは、「見る」「話す」「触れる」「立つ」を四つの柱に、「あなたは大切な存在です」と伝えるための技術と、「なぜそれを行うのか」という考え方(哲学)からできています。
市は、平成28年度から病院・介護施設向けの研修や、家族介護者向けの講習会を始めました。
講習を受けた人が実践したところ、ケアを拒んだり突然怒り出したりしていた被介護者の行動や態度に改善が見られたとの報告がありました。
介護者から「表情が穏やかになった」「ありがとうと言ってくれた」など喜びの声や負担軽減の効果も報告され、その有効性が確認できたことから、市は平成30年度に市民向けのユマニチュード講座をスタートさせました。
▽ユマニチュード講座の普及
これまでユマニチュード講座は、全国でも限られたインストラクターしか実施することができませんでした。
市はユマニチュードを地域に広めていくために、平成31年度にユマニチュード講座を実施できる講師として、独自で「ユマニチュード地域リーダー」20人を養成しました。
令和4年度には地域リーダーが実施する講座の対象を企業にも拡大し、講座の受講者は累計で8千人を超えました。
市は今後も、講座や啓発活動を通じてユマニチュードのさらなる普及に取り組んでいきます。
◆ユマニチュード講座を開催しませんか
皆さんの身近な地域や学校、企業等にユマニチュード地域リーダーを講師として無料で派遣し、出前講座を行います。
▽一般向け講座
福岡市の認知症高齢者の現状・認知症を知る・ユマニチュードとは・ユマニチュードの基本的な技術を学ぶ・ユマニチュード実践家族のその後など、ユマニチュードを「知る」ための講座です(1~2時間)。
※オンライン講座も可。
▽児童生徒向け講座
実技体験を通して、「見る」「話す」など認知症の人への接し方を学びます(約45分)。
このほか、認知症キッズサポーター養成講座も実施しています(45~90分)。認知症の症状や認知症の人の気持ちなどについて学び、後半は劇やDVDなどで理解を深めます。
各講座実施の申し込みは、開催希望日の6週間前までに各区地域保健福祉課へ。
※企業等は認知症フレンドリーセンター(【電話】092-791-9115【FAX】092-791-9550)へ。
○優しさを伝えるケア技法・ユマニチュード
認知症の人を支えるためには、「あなたのことを大切に思っています」と相手が理解できるよう、技術と哲学を通じて伝え続けることがとても重要です。
「見る」認知症の人は視野が狭くなることもあるため、同じ目の高さで正面から顔を近づけて見つめる。
「話す」ゆっくり、低めの声で話す。相手に反応がなくても、無言ではなく話し掛けながら介護を行う。
「触れる」つかむのではなく、下から支えるように、広い面積で触れて安心感を与える。
「立つ」寝たきりでは筋力も認知機能も衰えてしまうことから、可能な限り立つことを援助する。
○私もユマニチュードを実践しています
特別養護老人ホーム「りんごの家」(博多区井相田三丁目)施設長・草場進さん(55)
私たちの施設では、4年前にユマニチュードを取り入れた介護を始め、現在はユマニチュードの認証取得に向け、より質の高いケアの実践に取り組んでいます。ユマニチュードの技法は、コミュニケーションの基礎だと思います。たとえ相手の目が見えなくても、きっと気持ちは伝わります。認知症の人に対してはもちろん、自分の大切な人にこの考え方で接することができれば、もっと優しい社会になると思います。
問い合わせ先:各区地域保健福祉課
東【電話】092-645-1087【FAX】092-631-2295
博多【電話】092-419-1099【FAX】092-402-1169
中央【電話】092-718-1110【FAX】092-734-1690
南【電話】092-559-5132【FAX】092-559-5135
城南【電話】092-833-4112【FAX】092-822-2133
早良【電話】092-833-4362【FAX】092-833-4349
西【電話】092-895-7078【FAX】092-891-9894
◆「支援」から「活躍」へ~認知症の人が自分らしく暮らすために~
認知症の人やその家族が生き生きと暮らしていくために、社会参加できる場、活躍できる場が求められています。
市は、認知症の人の「支援」からステップアップし、認知症の人が生き生きと「活躍」できる環境づくりを進めています。
▽福岡オレンジパートナーズ
認知症の人とその家族、企業・団体、医療・介護・福祉事業者、そして市が一緒になって、認知症になっても自分らしく生きるために何ができるかを考え、実際の取り組みにつなげていきます。
平成30年度から勉強会を重ね、これまで約90の企業・団体等が参加しました。その中から、認知症の人が従業員として働く事例なども生まれています。
▽オレンジ人材バンク
認知症の人がいつまでも自分らしく活躍できる場の創出につなげようと、市は国内で初めて、認知症の人だけが登録できる「オレンジ人材バンク」を設立しました。
オレンジパートナーズ参加企業が、人材バンクに登録した人に就労や講演、製品モニターの依頼をするほか、企業と認知症当事者が「この製品どう?」「こんなのあったらいいな」など意見交換を行います。
認知症の人が使いやすいものは、みんなに優しい、使いやすい製品です。これまでに、「高齢者や認知症の人が安心して使い続けられるガスコンロ」「モノがなくならないガーデニングトートバッグ」「結ばなくていいエプロン」など、当事者の声を生かした製品開発が進んでいます。
厚生労働省の発表によると、認知症高齢者の数は2025年には約700万人となり、65歳以上の高齢者の約5人に1人に達すると見込まれています。
市はこれからも、さまざまな団体との連携・取り組みを進め、「認知症にやさしいまち」を目指します。一人一人の心豊かな「認知症フレンドリーシティ」をみんなでつくっていきましょう。
問い合わせ先:認知症支援課
【電話】092-711-4891【FAX】092-733-5914
<この記事についてアンケートにご協力ください。>