「福岡アジア美術館ベストコレクション展」(来年4月まで開催)に展示されるアーティスト10人の作品を紹介します。
◆第2回 イ・ウーファン
群青色の絵の具をたっぷり含んだ筆で慎重に引かれた線は、まるで真っすぐに落ちる水のようです。
作者は1936年に韓国で生まれ、幼年期から書画を学び東洋的な感性を培ってきました。1955年に来日して以降、日本を拠点に活動を始め、1958年には日本大学に入学します。大学で哲学を学ぶ傍ら、日本画の技法や材料の実験を重ねる模索の時期を過ごしました。1960年代後半に入ると、石やガラス等の素材を展示空間にシンプルに配置する斬新な作品を発表。高度経済成長によって「もの」が大量生産・消費される社会を批判的に捉えた美術グループ「もの派」の形成に貢献します。
本作《線より》は、東洋的感性を余すところなく伝える初期作品で、作者の代表作として知られています。具体的な形を描かず、隅から隅まで「現れては消える」反復した線には、作者が思索を重ねてきた「無限の概念」や「終わりのない時間」への関心が読み取れます。
作者は現在、日韓美術界を牽引する存在となり、アジアを代表する巨匠として国際的に評価されています。
(学芸員 趙純恵)
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福岡アジア美術館 Fukuoka Asian Art Museum
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