―なぜ政府は「貯蓄から投資へのシフト」を推進するのか―
■資産所得の倍増って、本当はどういうこと?
2022年に政府が「資産所得倍増プラン」を発表し、1年が過ぎました。広報紙のアンケートでも、お金に関する情報を求める声は多くあります。そこで、市と包括連携協定を結んでいる福岡銀行さんに突撃取材しました。[前編]
◆近くて遠い?お金の存在
――今回はお金の話です。よろしくお願いします。
さっそくですが、子どもの頃に「お小遣い帳をつけましょう」「お金はよく考えて使うように」「無駄づかいはいけません」など言われた記憶はありませんか。
――もちろん、あります。
では、家庭内でお金の知識やお金との付き合い方、台所事情などをじっくりと学んだ記憶はありますか。
――まったくありません。何だか聞いてはいけないような気がして…
そこです。お金は日常生活の中で不可欠なものであることは間違いありません。しかし、学校でも家庭でも学んでない方が圧倒的に多いと聞いています。お金にはいくつかの機能がありますが、私たちは普段意識することなく、稼ぐ、使う、貯める、借りるなど、様々な形でお金と関わっています。そして、人生にはお金に関する決断を迫られる場面がたくさんあります。
――確かに。あまり意識したことはないですが、決断が必要な場面は避けられないです。
そのとおりです。例えば、結婚する、車や家を買う、事業を立ち上げる、などです。その都度、検討して判断される方が大半だと思いますが、本来は、知識や情報が事前にあって、長期的なプランの中での意思決定を行う力が必要であることは言うまでもありません。
――そんな力が最初からあれば、失敗も少なくなると思いますが、家庭で教えられる範囲を超えていませんか。
おっしゃるとおりです。そこで登場したのが金融教育です。
◆金融教育とは
金融教育とは、一般的にお金についての教育のことを指しますが、単にお金や金融商品を対象としているわけではありません。「お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育」と定義されています。
つまり、お金を通じて社会や経済、将来の働き方等、社会で生活するために必要な知識や判断力を身につけるための教育です。このような力を養う教育が学校で推進されるようになったのは「金融教育元年」と呼ばれる2005年からです。そして、2022年4月からは高校において資産形成に関する授業が必修化されました。
◆金融教育の必要性
――お金のことが教育の一環として位置付けれられるということは、もっと大きな理由や背景があるということでしょうか。
鋭いですね。大きく理由が2つあります。1つは、2022年4月より成年年齢が引き下げられ、高校在学中の18歳でも親権者の同意なしで様々な契約を結ぶことができるようになったことです。その分、これまで認められていた未成年者取消権を行使できなくなるため、悪徳商法などによる消費者被害の拡大が懸念されているのです。
そして2つ目は、かつては資産形成といえば預貯金が主流でしたが、近年は低金利が続いており、預貯金ではほとんど資産を成長させることができません。雇用形態も多様化し、就職して定年まで勤め上げれば退職金で老後を過ごせる、と言う時代ではなくなりました。資産形成を考えるには、資産運用が欠かせない手段となりつつあるということです。このような背景から近年では金融リテラシーが求められる場面が増えているのです。
――今の子ども達は、早い段階で自分のライフプランを考えて行動することや、お金に関する判断力を養わないといけないってことですね。その日暮らしをしている私は怒られそうです…。
それだけ時代が変わったと言っていいのかもしれません。
私たちの時代は「将来○○になりたい」という夢や目標を持ち、それに向かって努力をすることが教えでした。しかし、今の子ども達は、「将来どのような生活をしたいか」「そのような生活をするためにはどの職業を選ぶか」「その職業に就くためには、どんな勉強をしたらよいのか」など、お金を交えたより具体的な目標を持つことが教えとなっています。
――お時間です。次号はもっと具体的なお金の質問をしますので、お楽しみに。
「貯蓄から投資へ」をサポートしていくのは地域金融機関としての役割と思っています。当行では、資産運用の手段として一人ひとりに合わせた資産運用プランをご提案するサービス(投信のパレット)などを行っています。どうぞお気軽にご相談ください。
◇ふやす
使う時期までふやしておきたいお金
投資信託 保険
◇そなえる
いざという時にそなえるためのお金
介護保険
◇つかう
日常の生活で必要なお金
普通預金 ローン
◇のこす
大切な人にのこしておきたいお金
生前贈与 相続
◆人生100年時代を見据えましょう
「人生100年時代」と言われる中、お金にも長生きしてもらう方法を考えなければなりません。
生涯を見通したときに、「現役時代の資産形成」とセカンドライフにおける資産活用が、80歳からの生活を大きく左右します。
福岡銀行さんでは、金融教育の一環として行われる職場体験学習で、独自の資料を作成しています。
教えてくれた人:福岡銀行行橋支店 支店長 鳥越茂樹さん
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