〔テーマ〕怪我をした際の応急処置~あなたはどう対処しますか~
飯塚市立病院 リハビリテーション室
理学療法士 濱口(はまぐち) 翔(しょう)
あなたは自分もしくは大切な方が怪我をしてしまった際に、どのように対応しますか。
こういった対応をする際の手引きとして、最も広く知られている概念に「RICE」があります。「RICE」とは、Rest:安静、Icing:アイシング、Compression:圧迫、Elevation:挙上の略です。これまで、これらの概念を通して応急処置がおこなわれてきましたが、「Rest(不動、固定)は回復を阻害する」との報告が多くの疾患( 怪我) で一貫して報告されてきたことから、2020年にDuboisらが提唱した「Peace and Love」という概念が出てきました。Peaceが急性期(怪我をしてすぐ)に推奨されること、Loveが亜急性期(急性期を過ぎてから後)以降に推奨されることになります。
本稿ではPeaceについて概説します。
Peaceとは、Protection:患部保護、Elevation:挙上、Avoid anti-inflammatories:抗炎症を控える、Compression:圧迫、Education:患者教育の頭文字をとって呼ばれています。
Protectionは、怪我をしてから1~3日間は怪我をした関節の運動を制限することで、出血の最小化や組織損傷の拡大防止を図る意図があります。ただし、安静は組織の回復を阻害しうるため、可能な限り最小限にとどめます。
Elevationは、患肢を心臓よりも高く挙上することで、患部からの間質液排出を促進する意図があります。
Avoid anti-inflammatoriesは、炎症反応(腫れる、熱っぽくなり赤くなる、痛みが出る)は組織の回復に必要なものであり、その反応を薬物療法やアイシングで抑制する(抗炎症)ことは、かえって長期的な組織回復にとってマイナスとなりかねないという意図があります。このようにアイシングに対しての考え方はRICEから大きく転換され、現時点でアイシングをする意義としては「組織の回復」では無く、「痛みの軽減」であるとされており、10分以上のアイシングは必要ないとされています。
Compressionは、包帯やテープを用いた外部からの患部圧迫は、関節水腫や組織の出血を制限する働きがあるという意図があります。
Educationは、医療従事者から怪我のマネジメント方法について教育を受けましょうという意図があります。
このPeaceを応急処置として行った後、医療機関で然るべき処置を受けましょう。
※飯塚市立病院よりお願い
初診の方は、かかりつけ医より紹介状を持参していただくようお願いします。
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