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写真が語る「いわき」の歴史

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福島県いわき市

■消えた登録有形文化財
常磐湯本町三函(さはこ)に残されていた旧「三函座(さはこざ)」の建物は平成19(2007)年7月、国の「登録有形文化財」に登録されました。
この制度は「文化財保護法」に基づく保護指定に準ずるものとして位置づけられていますが、明治時代以降の建造物は高度経済成長以降の生活や価値観の変容や都市化に伴って取り壊される例が相次ぎ、保護を求められたことが背景にありました。
平成8(1996)年の法改正によって、近世末や近代以降の建造物を〝ポスト文化財〞として「登録」することによって将来の文化財となる道を開いたのです。
明治時代後期に芝居小屋(大正7年に映画館へ改築)として開場し、昭和58(1983)年10月の閉館に至るまで多くの映画ファンを集めた三函座も、そうした一つでした。芝居小屋の雰囲気を残し、外観は白色のかまぼこ形の屋根と切妻(きりづま)造りなど特徴を持っていました。
登録後は、地元有志が各種イベントなどにより活性化策が進められてきました。
そんな折、東日本大震災で耐震性のない三函座は大きな損傷を負いました。補修維持が模索されましたが、個人所有であるうえに莫大(ばくだい)な費用が想定されました。そのさなか、国は個人所有物の建物であっても解体費用を負担する支援制度を打ち出しました。
こうして、三函座は一般建物と同様のレベルで解体されました。文化庁が震災の影響を受けた文化的建物などに対し支援メニューを打ち出したのは、解体後のことでした。
平成27(2015)年4月、旧三函座の登録有形文化財登録は抹消(まっしょう)されました。
(いわき地域学會 小宅幸一)

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