■人食いバクテリア~劇症型溶血性連鎖球菌(溶連菌)感染症
溶連菌は身近にいる菌で、感染しても無症候の事も多く、ほとんどは咽頭炎や皮膚の感染症にとどまります。しかし、まれに血液中に侵入することがあります。劇症型溶連菌感染症は、皮膚の傷やのど、鼻の炎症などから血液中に入り込んだ溶連菌により、発熱、四肢の痛みや腫れ、そして血圧低下を来たし、1~2日のうちに多臓器不全となる急速かつ重篤なものです。致死率は30%と言われています。手足の傷から菌が侵入した場合、その部位が短時間のうちに腐ってしまい手足の切断が必要になることもあるため人食いバクテリアとも呼ばれています。
本邦の発生数は2023年で941人と過去最多でしたが、今年はそれを上回るペースで増えています。増加の理由は明らかではありませんが、COVID-19対策緩和により溶連菌の咽頭炎が増えたこと、病原性や感染力が強い菌株が海外から持ち込まれた事などが影響しているのではと言われています。
溶連菌感染が激症化するメカニズムは不明な点が多いですが、糖尿病やアルコール多飲の人は発症の危険性が高いと言われています。
溶連菌は飛沫や接触によって感染するため、手指の消毒や咳エチケットなどの感染対策が重要です。またケガやヤケドからの感染も多いため皮膚を化膿させないよう清潔に保つことが大切ですし、必要に応じた抗生剤投与も発症予防につながります。
患部の腫れと40度近い高熱が同時に見られる場合は、速やかに救急対応が可能な病院で診てもらうことが重要です。
■けんこうQandA 放射線治療(4)
Q 肺がんの放射線治療について教えて下さい。(その(1) 非小細胞肺がん)
A 肺がんは日本で死亡数が最も多いがんです。肺がんは、細胞の形から「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に分けられ、治療方法が異なります。「非小細胞肺がん」は、手術できる程度の病気の広がりであれば、手術が主な治療法です。放射線治療は、手術が適さず、リンパ節以外には転移がない患者さんに行われます。患者さんの体調が良ければ、放射線治療と同時に抗がん剤を投与し、その後に免疫力を高める薬を投与します。放射線治療は1日1回、週5日(土日は休み)で、30~35回行います。1回の治療時間は10~15分です。このような治療で、手術が難しいにも拘わらず、約4割の患者さんが5年以上生存できるようになりました。副作用は、放射線治療中には皮膚炎、食道炎、白血球低下などが起こります。治療後には放射線肺炎が起こることがあり注意が必要です。合併症のため手術ができない患者さんも、放射線治療の選択肢があるので、放射線治療の専門医に相談することをお勧めします。
■乳腺外科(4)
乳がん手術:その歴史と進歩
前回、乳がんの治療全般について述べました。今回は治療のうち、手術について説明します。今に至る乳がん手術の基礎は、1900年代前半、アメリカ人の外科医ハルステッドが確立したものです。当初は乳房だけでなく、その背側にある大胸筋、わきのリンパ節も全て切除する「拡大手術」が広く行われていました。他のがんでもそうですが、当時はより広範囲に病巣と周囲の組織を切除することが、根治に結びつくと信じられていたからです。
その後徐々に、体へのダメージを減らすべく、手術範囲が縮小されていきました。現在、乳房を全て切除する乳房切除術に加え、乳房を温存する乳房温存手術が大きく発展しています。乳房切除術後に、乳房の形を再建する手術を組み合わせることもあります。わきのリンパ節については、明らかに転移しているケースを除き、一部のみ摘出して温存します。
現在では、乳房やわきのリンパ節の手術自体を省略する治療法の開発が世界中で進められ、一定の成果を上げています。昨年末には、早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法による「切らない治療」が薬事承認・保険適用となりました。
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提供・問い合わせ:(一社)いわき市医師会
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