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自治体の皆さまへ

市民の健康教室

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福島県いわき市

■医療界の働き方改革
最近テレビのニュースで、物流業界の働き方改革によりトラックの運転手が不足しているという話を耳にします。医療の世界でも、医師不足地域の医療崩壊に配慮して実施が先延ばしされていた医師の働き方改革が、この4月から本格稼働しました。医師も、一労働者として労働法令を遵守し、適正な労働時間を守ろうというものです。
いわき市は全国的にみても勤務医の人口あたりの数が少なく、医師の平均年齢の高い街です。医療従事者は、人の健康や命を守ることに使命感をもって働くあまり、時間外労働を厭わない環境に身を置きがちです。その挙げ句に疲弊し、健康を害し、家庭を犠牲にすることが多くなり、人並みの人生を送れなくなるようでは、人の幸福を医療で支援する職業人としては本末転倒です。
医療界の働き方改革を実践するには、業務の効率化、業務の分担、そして医療人自らの意識改革が必要です。それと共に、過重労働が医師不足に拍車をかけてしまわないように、患者さんやその家族、そして医療を享受する市民のみなさんの理解と協力が必要です。医師にも休養を与え、医療技術や知識を研鑽する機会、家族と共に過ごす時間を設けさせてください。
救急車の利用の一部を有料化しようとする自治体もみられるようになりました。自分の受ける医療の必要性、重要性、緊急性を十分に理解し、いわき市の医療に協力してください。必要な医療を皆が過不足なく受けられるように、医療従事者と市民が力を合わせて協力して行かねばなりません。

■けんこうQandA 放射線治療(6)
Q:乳がん術後の放射線治療について教えてください。その(1)
A:乳がん手術後の放射線治療(術後照射)は、手術で取り切れなかった微小ながん細胞をなくすために行います。昔は、乳房をすべて切除する手術(乳房全切除術)が行われていました。その後、がんとその周りの組織だけを取り除き(乳房部分切除)、残った乳房および近くのリンパ節に放射線治療を行う方法(乳房温存療法)が開発され、乳房全切除術と同じ効果があることが分かりました。この方法だと乳房を失わずに済みます。現在、乳がん患者の約半数が乳房温存療法を受けています。
ただし、部分切除でも乳房が大きく変形することがあるので、手術前に医師とよく相談してください。また、活動性の膠原(こうげん)病のある患者さんは、放射線治療の副作用が強くでるため、乳房全切除が行われます。
乳房全切除後にも術後照射が必要な場合があります。がんの大きさが5cm以上あったり、脇の下のリンパ節に転移が見つかったときには、手術した側の胸壁および近くのリンパ節に術後照射をする必要があります。
次回は、術後照射の期間や線量、副作用について説明します。

■乳腺外科(6)
ー乳がん薬物療法の実際ー
6月号で乳がん薬物療法が「個別化」を軸に展開されていることをお話ししました。では、そもそも乳がん治療になぜ薬物療法が必要なのでしょうか。
それは、薬物療法が「全身治療」であるためです。というのも、乳がんは局所治療(手術療法や放射線治療)のみでは完治できないのです。ごく初期の乳がんを除き、見つかった時点で、がん細胞は目に見えないレベルで全身に広がっています。全身のがん細胞を適切に制御しなければ、月単位、年単位で再発が起きる可能性があります。
実際、かつては局所治療後しばらくして再発する方々が後をたちませんでした。そこで乳がん薬物療法が1970年代から本格的に実用化され、少しずつ現在の形にまで整えられてきました。
治療の現場では、「抗がん剤はできれば避けたい」という患者さんからの声を多く耳にします。ただ、今回お話ししたような経緯を振り返ったとき、薬物療法という選択肢があることは、患者さんにとって「福音」と考えていただけたら幸いです。不安や疑問があれば躊躇せずドクターに相談してみてください。私たちも、患者さんに前向きな気持ちで治療に臨んでもらえるよう丁寧な説明を心がけています。

かかりつけ医の紹介・相談は、医師会事務局へ
(ホームページURL【HP】https://www.iwaki.or.jp)

提供・問い合わせ:(一社)いわき市医師会
【電話】38-4201

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