■伊達地方と桑
桑は蚕のエサとなります。かつて養蚕地帯だった伊達地方では、いたるところに桑畑がありました。現在でも田畑の境の目印に桑が残されていることが多く、かつての桑畑の名残を見ることができます。伊達地方は昔から養蚕だけでなく優良な桑が育つ産地としても有名でした。明治時代に県の御用達だった保原町の渡辺源兵衛(わたなべげんべえ)家の文書には、青森県や広島県など全国に桑苗の販売をしていたことがわかる仕切書(帳簿)があります。
伊達地方で良い桑が育つ理由として、地域の中心を大きな川が流れる地形にあります。阿武隈川を主として、川が栄養豊富な土壌を運び、桑の栽培に適した土地となっているのです。
桑苗栽培が特に盛んだった地域に梁川町向川原(むこうがわら)地区があげられ、昭和2年の年間生産高は128万本にも上りました。伊達市には、向川原地区で使用していた表皮を剥ぐ皮むき器や規格を図る桑苗定木などの桑栽培用具が残されています。これらを含む伊達市の蚕糸業関連用具1344点は、国重要有形民俗文化財の指定を受けています。
また、伊達地方が発祥の桑品種も数多く存在します。最古の桑品種といわれる「柳田(やなぎだ)」をはじめとして、「小幡(おばた)」・「市兵衛(いちべえ)(または市平)」・「六之丞(ろくのじょう)」・「高助(たかすけ)」など、いずれも江戸期に伊達地方で栽培が始まり、全国に広まりました。
皆さまも町に残る桑を探してかつての「お蚕どころ」に思いを馳(は)せてみてはいかがでしょうか?
◇令和6年度第1回企画展 伊達のお蚕用具展
6月1日(土)〜9月23日(月・祝)
伊達市保原歴史文化資料館
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