受け継がれる「とも和(あ)え」
「とも和え」とは、和える食材と和え衣にする食材が同じ料理のことをいいます。アワビやカワハギなどのとも和えもありますが、本市を含む相双地域で「とも和え」といえば、「アンコウのとも和え」のことを指します。
アンコウのとも和えは、東北地方の各県で食べられている郷土料理ですが、当地域の調理法は、おおむね次のとおりです。
アンコウの肝を炒めて味噌(みそ)と砂糖、酒などで味付けをし、そこへ茹(ゆ)でたアンコウの身や、食べやすく切った皮、胃袋などの内臓を入れて炒め、さらに水で戻した切干大根を加えて完成です。
切干大根を入れるのは、量を増やしてみせる、いわゆる“かさ増し”のためと考えられ、アンコウを豊富に入手できる漁村周辺では、切干大根は入れずにアンコウだけで作る贅沢(ぜいたく)な楽しみ方もあります。
本市では約五、六十年前まで、田植えのときの田の神さまへのお供えや、田植えの手伝いの人たちを労(ねぎら)うために振る舞うハレの日の料理として、とも和えを作っていたようです。
さらに、とも和えは江戸末期の史料でも確認できます。中村藩の豪商吉田屋の手代であった源兵衛の日記である『吉田屋源兵衛覚日記』には、文久2年(1862)2月、吉田屋の四女の婚礼で振る舞われた料理の献立のなかに、「あんこうノともあへ」が登場します。調理法などの詳細は記されていませんが、当時から現在と同じ料理名であったこと、婚礼というハレの日のお祝い料理に位置付けられていたことがわかります。
現在は、当時のようにハレの日の料理という感覚は強くありませんが、アンコウのとも和えがこの地域で脈々と受け継がれ、親しまれてきた料理であることは確かです。これからも未来へ継承されていくことを願います。
問合せ:市博物館
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