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おしえて博物館-六十二-

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福島県南相馬市

『縄文土器に付けられた顔』

これは、何?
今からおよそ5000年前、縄文時代中期に粘土で作られた「顔」です。逆三角形の輪郭に目、口が表現されています。鼻もありましたが欠けています。頭には渦巻文、耳の丸い表現は耳飾りでしょうか。
縄文時代のことをよく知っている人は「土偶」と答えるかもしれません。でも不正解!土偶にしては首の位置が変なのです。頭の後ろに首が伸びていることから、おそらくこの「顔」は、樽(たる)のような形をした縄文土器の口の部分に、内向きに付けられていたと考えられるのです。
ここで、縄文土器について考えてみましょう。土器は主に食べ物を煮炊きする道具で、現代でいう鍋といえます。土器の中には水が満たされ、シカやイノシシの肉、ドングリ、クリ、トチノミなど植物の実のほか、イモ類や山菜、キノコも入っていたでしょう。でも、これらは人間が奪った自然界の生命そのものともいえるのです。火にかけられると、やがて中の水が温まり湯気が上がり始め、煮立ってくると中身はグツグツゴトゴトと音を立て始めます。この様子は、一度生命を失ったものたちが息を吹き返し、声を上げ始めた、つまり土器の中で生命が復活、再生されたと、縄文人の目には映ったのではないでしょうか。出来上がった料理そのものは人間の生命を維持するエネルギーの源になるわけですから、まさに土器の中で「死」が「生」に転換されたわけです。
縄文人は、土器を単なる調理器具ではなく、生命を再生させる、あるいは生命を産み出すことができる、お母さんのお腹と同じように見ていたのではないでしょうか。
この「顔」は、生命の再生を実現するためにじっと中身(お腹)を見守っている母なる精霊の顔なのかもしれません。

問合せ:市博物館
【電話】23-6421

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