寺院の境内には、たいていの場合屋根つきの「鐘楼」という建物があり、鐘が吊つり下がっています。かつては朝夕の時を告げていたこともありますが、今は参拝者が鳴らす場合を除いては、除夜の鐘など特別な場合に鳴らすことが多いようです。
寺院の鐘のことを梵鐘(ぼんしょう)といい、銅でつくられることから銅鐘ともいいます。その歴史は古く、国内最古の鐘は奈良時代にまで遡(さかのぼ)ります。
市内で最古の鐘は、鹿嶋神社(かしまじんじゃ)(大)境内の観音堂の軒に吊り下げられていた天文13年(1544)のもので、県指定文化財となっています。
鐘にはたいていの場合「銘文」が刻まれており、いつ誰がどういう経緯で納めたかが記されています。この鐘の銘文を見ると、白河を治めていた結城(ゆうき)家の義綱(よしつな)・晴綱(はるつな)父子や一門、家臣たちが共同で奉納したことが分かります(現在、市歴史民俗資料館に展示)。
他にも、龍蔵寺(りゅうぞうじ)(年貢町)の鐘は元禄4年(1691)に白河藩主松平忠弘(まつだいらただひろ)が、関山満願寺(せきさんまんがんじ)(関辺)の鐘は寛文4年(1664)に白河藩主本多忠平(ほんだただひら)が、それぞれ寄進したもので、いずれも国の重要美術品となっています。これ以外にも、江戸時代に遡る鐘は市内に多くあり、白河の歴史の名残をとどめています。
一方で、火災などの災害や、戦時中の「金属類回収令」により失われたものもあります。
このように、地域のお寺の鐘も歴史の資料といえます。お寺を訪れた際には、鐘やその銘文を探してみてはいかがでしょうか。
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