■第68回「平安時代の福島を想う」
今春、福島稲荷神社の節分祭に、福島市出身力士、大波三兄弟(若元春、若隆景、若隆元)と丹治兄弟(丹治、大賀)が参加。恰幅(かっぷく)のいい力士が豆まく裃(かみしも)姿は神社に実に映え、邪気を追い払い、福を呼び込む効果あらたかと感じます。集まった約600人が、福豆をつかみ取ろうと大歓声。来年もぜひ参加してほしいものです。
福島稲荷神社をこの地に祀ったのは、平安時代の陰陽師安倍晴明(おんみょうじあべのせいめい)。NHK大河ドラマ「光る君へ」で、ユースケ・サンタマリア扮する怪しげな人物です(劇中のイメージですが)。
ただ、朝廷に重用され、大河ドラマにも登場する歴史的人物が、将来有望な地として福島を選び神社を置いたことに、誇りと親近感を感じます。創建時のイメージも膨らんできます。
また、小倉百人一首の歌枕、文知摺観音も平安時代につながるもの。源融(みなもとのとおる)と虎女(とらじょ)との悲恋は、「陸奥(みちのく)のしのぶもぢずり誰ゆゑに 乱れそめにし我ならなくに」の歌に詠まれ、今に伝わります。百日参りを終えた虎女が、もちずり石に源融の面影を見る様子、源融が都で恋しさに心乱れる様子が目に浮かんできます。
平安末期には、飯坂・大鳥城を拠点とする佐藤一族が活躍します。特に佐藤継信(つぐのぶ)・忠信(ただのぶ)兄弟の忠義ぶりは、「義経千本桜」の重要な題材として、歌舞伎などで今も演じられ、人気を博しています。
自らの国、地域の原点を確認することは、未来に向けてしっかりとした土台をつくることになります。M8・3以上と推定される貞観(じょうがん)地震(869年)が注目されるようになったのは、大震災後のこと。惜しまれてなりません。改めて、自国、地元の歴史に目を向けていきたいものです。
最後に、ヘイアン貴族おじゃる丸と福島人を虜にするもの、それはプリン。やんごとなき甘さと香りが心とろかせ、福島市は、総務省家計調査で全国一となりました。福島には、地元が誇る卵、牛乳、くだものを使ったプレミアムなプリンもあるからでしょうか。平安の世は、プリンを食べながらまったり気分で、学びましょう
福島市長 木幡 浩(こはたひろし)
<この記事についてアンケートにご協力ください。>