■おいしい食
安積疏水の恵みで大きな発展を遂げた米づくりなど、代々受け継がれてきた郡山の食文化。いつも私たちにおいしい「いただきます」を届けてくれます。
◆郡山の〝風土〟が生んだ誇りある〝フード〟
郡山における稲作の歴史は古く、大槻町福良沢遺跡や田村町大安場古墳などでは、弥生時代の農耕具が出土しています。江戸時代には、幕府へ年貢を納めるため、新田開発などがいっそう進められました。
1882年に安積疏水が完成すると、安積郡内全域の灌漑(かんがい)面積が拡大し、農業は大きく成長。その前の1880年には金透小学校内に県立農学校が、1896年には小原田地内に県農事試験場が設置され、農業技術も進歩しました。今や全国有数の米どころとなった郡山は、ブランド米「あさか舞」を生産するなど、確かな技術を継承しています。
また、江戸時代に水不足対策として作った各地のため池は、安積疏水の通水で役目を終えると、鯉の養殖場として利用されるように。養蚕(ようさん)業が盛んだった当時は、蚕(かいこ)のさなぎを餌(えさ)にすることで栄養豊富な鯉が育ち、鯉のうま煮やあらいなどが祝いの席に出されました。今でも鯉の養殖が盛んな郡山は、鯉の市町村別生産量で全国1位に輝いています。
○馬耕作業の様子(1921年前後)
当時は県の推奨で、馬の力を借りて田畑を耕す馬耕が広く普及。特に日和田村では108戸が作業し、作付面積としては安積郡で一番の広さでした。
○活魚車(鉄道貨車の一種)(1935年)
昭和初期には、養殖された鯉1,200貫(4,500kg)を輸送したことも。水槽の中の鯉は生きたまま、郡山駅から当時の海軍省魚納所へ送られたそうです。
○鯉に恋する郡山プロジェクト(2015年~)
鯉食文化の歴史を守り、その魅力を全国に広げるため、市と当時の県南鯉養殖漁業協同組合が始動。市内の鯉料理提供店は91店舗にまで増えました。
◆食の魅力をみんなで伝え、継いでいく
人口減少や自然災害などで、全国的に農業の担い手不足や生産量の低下が懸念されている現代。
市では、もっと食を身近に感じてもらうため、米や野菜、鯉などの生産物や生産者の情報を発信するほか、新規就農者へのサポートなどもしています。生産者自身も、マルシェや農業体験イベントなどに取り組み、6次産業化を通じて、消費者と交流する機会を増やしながら、つながりを築いています。
当たり前にある故郷の食も、知ればもっと好きになる。みんなの好きが集まれば、郡山の食文化は、この先も私たちの暮らしを支え、受け継がれていくでしょう。
○こおりやま「お米の日」
2022年12月、「郡山市産米の消費拡大の推進に関する条例」を公布し、郡山市産米の消費拡大を推進しています。
○フロンティアファーマーズ
こおりやま広域圏で農業に携わる生産者の姿を、記事と写真・動画で伝えるウェブメディア。2024年3月にはデジタルブランドブックも公開しました。
○新規就農へのサポート
園芸作物の栽培技術などを学べる園芸カレッジや、オンラインでも相談できるサポート窓口など、就農を目指す方への支援体制が充実しています。
○朝市・マルシェ
郡山の農産物や加工品を、直売所のほか朝市・夕市、マルシェで販売。生産者とのコミュニケーションが、地元の食を愛するきっかけになります。
◆郡山の食の名物
○ASAKAMAI 887
米作りにかかる88の手間と、さらに厳格な7つの生産基準をクリアした「あさか舞」の最高級ブランド米です。
○郡山ブランド野菜
おいしさ・栄養価・個性・郡山の土地や気候との相性などから選び抜かれた、珠玉の野菜です。
○酒
郡山6蔵元の地酒は良質な米と水で、ふくしま逢瀬ワイナリーのワインは郡山産ブドウなどで作られています。
○100年フード
文化庁認定の100年続く食文化として、「クリームボックス」と「郡山ブラック」が登録されています。
◆〔Interview〕おいしい野菜がこれからもまちの誇り
(有)ニッケイファーム 代表取締役 大竹 秀世さん、志保さん
○“おいしい”感動を伝えたい
毎年100種類以上の野菜を、素材の魅力を引き出すために無農薬で栽培しているほか、飲食店と連携し、野菜の6次産業化にも取り組んでいます。ウチだけでなく、郡山の農家が作る野菜は本当においしい。みんなが野菜のおいしさに感動できるよう、毎日心を込めて野菜を作っています。
○農家として、景色を守っていく
畑の景色は、ずっと変わらないものだと思います。小さい頃に畑の虫を捕まえて遊んでいた自分が、今度はその体験を自分の子どもにさせてあげられるって、なんだかうれしいですよね。これからも発展する郡山を応援しつつ、変わらない景色を未来に残していきたいです。
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