■伝統文化
160の指定文化財(登録有形文化財を含む)が存在する郡山。地域で古くから続く芸能や工芸品は、今も脈々と受け継がれています。
◆人から人へ想いをつなぐ
市制施行100周年の歴史は、合併60年の歴史でもあります。1965年5月に、市と10町村が合併し、8月には、田村郡西田町・中田村も合併。この昭和の大合併によって、郡山にはそれぞれの町村に根付いていた伝統文化が集まりました。これらの多くは、指定文化財に指定され、市を代表する伝統文化として保存・継承されています。
しかし、文化の継承は一筋縄ではいかないこともありました。平安時代から始まったとされる音路の獅子舞や江戸時代から続く柳橋の歌舞伎も、数回の中断を経験してきました。
音路の獅子舞の場合は、三匹獅子舞を継承すべく、保存会を結成。保存会は、地元小学校で太子堂の歴史の講話をしたり、舞を披露する場を設けるなど、地域の伝統を絶やすまいと、積極的に文化を守る活動を続けています。また、柳橋の歌舞伎も、熱心な愛好者や地域の皆さんの「伝統を守り継承していきたい」という想いによって、地域ぐるみで保存会が結成され、今日まで上演が続いています。
○音路の獅子舞(富田東)
1958年、市の重要無形民俗文化財に指定。悪役・災禍退散を目的に舞う。三匹の獅子は、地元の小学生が担っている。
○柳橋の歌舞伎(中田町)
1983年、市の重要無形民俗文化財に指定。演じ手不足などの理由で数回に渡り休演した時期を乗り越え、江戸時代から現在まで上演されている。
○高柴の七福神踊り(西田町)
1987年、市の重要無形民俗文化財に指定。もとは七福神が地域の小正月に各家庭を訪れ、新春を祝う芸能だったが、現在は高柴デコ祭りで上演される。
◆担い手の広がりが継承の糸口
地域内では、地元小中学生が授業の一環として文化に触れるなど、地元文化を継承する取り組みが行われています。また、直接的な関わりが薄かった市内の大学生が主体となり、伝統工芸品を活用したイベントを行うなど、伝統文化が地域を飛び出し、身近に感じられる機会も増えています。こうした動きは、これまで知らなかった人が興味を持つきっかけとなり、地元の人のみで構成されていた担い手の多様化にもつながっています。
伝統をつなぐ人と人との関わりが広がり、次代に残していきたいという変わらぬ想いが、これからの郡山の文化を支え続けます。
○御舘中学生への指導(柳橋の歌舞伎)
役者・化粧・三味線の3つのコースに分かれ、全校生徒が歌舞伎を学ぶ。
○はやまっ子
市内の小学生が、伝統文化や昔遊び、地元の民話の語り部などを体験し、地域への愛着を深めている。
○復興の灯火プロジェクト[関連本紙18ページ]
震災の記憶を継承して人のつながりを構築することなどを目的に、2019年から毎年3月11日に開催。海老根伝統手漉和紙の灯ろうが展示される。
○高倉人形浄瑠璃ワークショップ
1893年頃に途絶えた人形浄瑠璃の小道具などが、1955年に県の重要有形民俗文化財に指定。地元の有志が2017年に活動を復活させ、子どもたちへ浄瑠璃を体験できる場を提供している。
◆伝統工芸品が生み出す交流
県の伝統的工芸品に指定されている郡山の伝統工芸品は、江戸時代から受け継がれ、今日まで発展してきました。
近年では伝統技術を生かし、若い世代にも好まれる工芸品が創り出され、国内外を問わず工芸品を通した交流が生まれています。
○三春張子
張子を作るための三春人形木型は、県の重要有形民俗文化財にも指定されています。
外国人向けツアーの一部に張子の絵付け体験が組まれるなど、国際交流が生まれています。
○海老根伝統手漉(てすき)和紙
地元小学校の児童が卒業証書用の和紙作り体験をしたり、和紙を使用した灯ろうの展示イベント「秋蛍」も開催しています。
そのほか、鳥取市(姉妹都市)やオランダ(ホストタウン)との和紙を通じた文化交流などが行われています。
◆〔Interview〕このまちに続く伝統文化をより多くの人へ/橋本広司民芸 18代目 橋本将司さん
○職人・演者として伝統を受け継ぐ
西田町にある高柴デコ屋敷で、先代とともに張子やひょっとこのお面などを作っています。自由度の高い動きを形にできる張子の特長を生かし、舞踊や歌舞伎をモチーフにした作品も制作しています。また、高柴の七福神踊り保存会の一員として民俗芸能にも取り組んでいます。
○郡山の文化をもっと多くの人へ届けたい
市内外を問わず、郡山の伝統文化を多くの人に知ってもらいたいですね。張子は、お客さんのニーズに合わせ、新たな要素を加えています。また、高柴の七福神踊りは、各家庭を訪れる練り歩きも復活させました。古き良き文化と新たな文化の両方の魅力を伝えていきたいです。
※写真は本紙をご覧ください。
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