「持続可能な開発目標(SDGs)のモニタリングのための公的統計の理論と実務コース」実地研修報告
■「SIAP」ってどんなところ
国連アジア太平洋統計研修所(SIAP)は、開発途上国の政府統計職員に対する研修を通じ、統計の実務能力を養成することを目的として、1970年に日本国政府と国際連合との間の協定に基づいて設立された国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の機関です。千葉県千葉市幕張にあり、総務省がSIAPの協力機関となって各種の協力・支援を行っています。研修修了者は、これまで、アジア太平洋諸国だけでなく、北米や中南米、ヨーロッパ、アフリカも含め、世界中の政府統計職員等約3万人以上にのぼり、修了者の中には、各国の統計局長として活躍されている方もいらっしゃいます。
◇SIAP所長 シャイルジャ・シャーマ
SIAPの所長として働いている事を大変光栄に思っています。私たちは、国連統計部、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、UN Women など多くの国際機関と協力し、アジア太平洋地域の統計能力の発展に貢献できるよう、日々取り組んでおります。
◇SIAP講師
副所長:高田聖治
統計官・講師:ピナール・ウチャール(経済統計)、ソコール・ヴァコ(環境統計)、クリストフ・ボンタン(ビッグデータ)、シノヴィア・ムーニー(社会統計)
〈主な研修コース〉
・統計の基礎理論および実務について幅広く学ぶ長期コースや国際統計の動向や各国からの個別要望を踏まえた短期コースを研修所又は、各国に講師が出向いて実施するほか、様々な統計分野についてのe-ラーニングを実施しています。
■「持続可能な開発目標(SDGs)のモニタリングのための公的統計の理論と実務コース」研修報告
このコースは、独立行政法人国際協力機構(JICA)と共同で開催されており、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」および「持続可能な開発目標(Sustainable Development:Goals:SDGs(※))」に不可欠な公的統計の整備・充実を図る見地から、アジア太平洋地域等の開発途上国の政府統計職員に対して、統計調査および指標の設計・解釈・公表における基礎理論と実務および主要な公的統計の作成・解釈・普及の基準や枠組みについて研修を行い、知識および公的統計作成能力を向上させることを目的としています。
(※)2015年9月に国連で採択された、2016年から2030年までの国際的な開発目標で、17のゴール・169のターゲットから構成される。
令和5年度の本研修コースの日程および参加国は次のとおりです。
開催期間:令和5年8月21日(月)~12月1日(金)
参加者:アンゴラ、フィジー、カザフスタン、キルギス、マリ、ミクロネシア、モンゴル、セントビンセント及びグレナディーン諸島、ソロモン諸島、タンザニア、10か国から10名の研修員が参加
内容:研修科目は、(1)公的統計の基本(統計基準と統計システム、社会統計、経済統計と国民経済計算等)と日本の公的統計について、(2)統計手法(記述統計およびRによる推測統計等)、(3)SDG指標の概論(持続可能な開発のための2030アジェンダ、SDGグローバル指標の枠組み等)と(4)SDGsに関連するデータおよび統計(貧困および不平等の測定、環境統計等)並びに(5)SDG指標の分析(プロジェクトワーク)、帰国後に(6)アクションプランの作成を行います。
講義は、主としてSIAPの講師が行いますが、内閣府、総務省、文部科学省、厚生労働省といった各府省や国立社会保障・人口問題研究所、日本銀行等から、講師派遣の協力を得て、日本の公的統計について講義が行われました。また、長崎県を訪問し、統計業務の実施状況等についての実地研修を行い、日本における統計調査の実務等を学びました。
このほか、国際通貨基金(IMF)、国際連合食糧農業機関(FAO)、世界銀行、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)といった国際機関からも専門家が派遣され、SDGsに関する各種統計について講義が行われました。
研修員は、講義に加え、2班に分かれ、研修員が自ら決めたテーマについてデータを取得・分析し、レポートにまとめ発表するプロジェクトワークを行い、今年度は、「教育水準と出生率の関係」、「気候変動が島しょ国に与える影響」について、班ごとに分析・取りまとめを行いました。
研修員は、研修の最後に、研修内容を帰国後どのように自国の統計業務に生かしていくかまとめたアクションプランを作成し、帰国後、SIAPに提出することになります。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>