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古河歴史見聞録

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茨城県古河市

■「花押」のはなし~思いの込もったサイン~
皆さんは自分のサインをお持ちでしょうか? 持っていなくとも1度はオリジナルサインを考えた経験があるのではないでしょうか。
思春期真っ盛り、中学生の私は筆記体に憧れ、自分が思うかっこいいサインを考えていました。そんな私が大学生の時に出会ったのが、古文書に書かれた独特なマーク「花押(かおう)」でした。
花押とは、自身の名の文字を図案化したものです。起源は中国で、日本で使われ始めたのは平安時代ごろとされています。文書を代筆させることが多かった武士の世界では、文書に花押を書くことで証拠力や説得力を持たせました。

◇時代とともに変化する花押
花押はもともと自署を省略して書いたことが始まりで、これを「草書」といいます。習字の授業で聞いたことがあるかもしれません。この「草書」をより省略して図案化したのが花押です。
花押にはいくつか種類があり、名前の2字、あるいはその扁(へん)や旁(つくり)を合わせる「二合体」、1字のみを使った「一字体」というものがあります。例えば、源頼朝は「頼」の「束」と「朝」の「月」を組み合わせた花押を使っていました。
また、鳥や獣をモチーフにした「別用体」というかわいらしいものもあります。戦国時代になると自分の理想・願望を表す字を使う武将も現れ、江戸時代には、徳川家康が使用していた「明朝体」という形が流行します。上下に引いた2本線の間に文様を描いたもので、陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)(今でいう占い)にのっとり作られました。「明朝体」は武士だけでなく庶民の間にも広がり、より分かりやすいものへと変化しました。

◇似ている! 古河公方の花押
室町幕府の初代将軍、足利尊氏の花押は、当初の名である「高氏」の「高」と「氏」を合体させ作られており、その形は古河公方(くぼう)へも影響を与えています。
歴代古河公方の花押をよく見てみると、上部にぴょこんと出ている点とその下に伸びる理髪店のサインポールみたいな模様…。初代成氏(しげうじ)・二代政氏(まさうじ)・四代晴氏(はるうじ)の花押はうり二つです。(比較には古河歴史博物館で販売中の古河公方グッズがオススメですよ)
このように一族で似た花押にすることで、一族のつながりや威厳を示す狙いがあったと考えられます。

◇愛敬も欲しい 殿さまの花押
「雪の殿さま」の愛称でおなじみの古河藩主土井利位(としつら)。彼の花押の説明書きのような資料があります。よく見てみると、運や寿命・福・眷属(けんぞく)・病払(やまいはらう)・住むところ…などなど多くの願いが込められていますが、気になるのが「愛敬(あいきょう)」。家来や庶民に愛されるような人物でありたい…。という利位の思いなのでしょうか。
辞書で調べてみると、かわいらしい、人当たりが良いという意味と「すべての人に真心を持って親しみ、上を敬い下を侮らない心を持つこと」とありました。お殿さまとしてどちらも必要な要素かもしれないですね。
私が花押を作るときは、運・寿命・福・知恵・愛敬、そしてかっこいい形! 全部こみこみで作ってみようかなあ。

◇企画展「古河の花押コレクション」
期間:5月25日(土)~6月30日(日)

古河歴史博物館学芸員 齋藤莉瑚

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