令和4年度からスタートした「確かな学力」育成プロジェクトは、これからの社会を担っていく小・中学生が基礎的・基本的な知識を確実に身につけ、課題を解決するために必要な思考力・判断力などを伸ばすことや、主体的に学習に取り組む態度を養うことで、子どもたちの「確かな学力」の定着・向上を図ることを目的としています。
◆木のように根幹をしっかりつくる 常陸大宮市の教育方針
目的達成のため、基礎的な部分として大切なのは、「関心・意欲・態度」で、その上で、思考力や知識などが確かなものとして身についていくという考えのもと、市では様々な取組を進めています。
この考え方の構造を「学力の樹」として表すと、図のように、「関心・意欲・態度」が根の部分、「思考力・判断力・表現力等」が幹の部分、「知識・技能」が葉の部分として例えられます。市では、「学力の樹」を構成する各部をデータ化し、子どもたち一人ひとりに合った指導を行うために「関心・意欲・態度」を測る「よりよい学校生活と友達づくりのためのアンケート(hyper-QU)」、「思考力・判断力・表現力等」を測る「認知能力テスト(NINO)」、「知識・技能」を測る「標準学力検査(NRT・CRT)」を行っています。これらのアンケートやテストを同時に導入しているのは、県内でも常陸大宮市が初めてです。
※図は本紙をご覧ください。
◆常陸大宮市の取り組み(1)
子どもたちの学校生活への思いや能力・学習到達度を「データ化」
◇学校生活への思いをアンケートでデータ化し指導に生かす
「確かな学力」の育成の基盤となる親和的な学級づくりのために、常陸大宮市では、「よりよい学校生活と友達づくりのためのアンケート(hyper-QU)」を行っています。hyper-QUでは、友人関係、先生との関係、学級との関係、学習意欲などの質問項目があり、それらの回答結果により、学校生活を楽しいと思い、自分の居場所があると感じている「学級生活満足群」や自分の思いや存在が周囲に認められていないと感じている「非承認群」などに分類されます。学校生活に関して子どもたちが感じている気持ちはデータ化しづらいものですが、アンケートを行うことで、子どもたちの内面が捉えやすくなり、いままでよりもさらに先生が子どもたち一人ひとりに合わせた声かけや目配りができるようになりました。
◇学校生活に満足する子どもたちが2年間で5%増加
データをもとにした先生方の関わり方は、徐々に結果として現れており、下の表のとおり、「確かな学力」育成プロジェクト開始の令和4年度前期と比較し、「学級生活満足群」と判定された子どもたちの割合は令和5年度後期では、5%以上増えており、目標としている「親和的な学級づくり」が少しずつ実現しています。
表「よりよい学校生活と友達づくりのためのアンケート(hyper-QU)」で「学級生活満足群」と判定された常陸大宮市内の児童・生徒の割合
◇学習到達度だけでなく子どもたちの能力もテストでデータ化
また、学習面でも子どもたちの状況を可視化させ、一人ひとりに合ったサポートができるような取組を行っています。新しい学年が始まったタイミングでは、前学年で学習したことがどれだけ身についており、日本全国で比較した時にどの位置にいるかを測る「標準学力検査テスト(NRT)」と、思考力や判断力を測る「認知能力テスト(NINO)」を行い、認知能力相応の学力が身についているかをデータ化・分析し、新年度の指導に活用しています。例えば、NRTで、昨年度までに学習した内容の理解度が認知能力と比べて低い子どもに対しては、具体的に何をどのように頑張ればよいかを話したり、逆に、NINOで測られた認知能力以上の結果をNRTで出している子どもに対しては、すでに、予測以上の頑張りをしている可能性が高いため、「頑張ろう」という声かけではなく、良い結果を継続できるようなサポートを行うなど、一人ひとりに合わせた学習指導をすることができます。
◇年度末にも学習到達度を測り、今後の学校全体の指導に役立てる
さらに、年度末には、1年間の基礎的・基本的な学習内容の到達度を把握する「標準学力検査テスト(CRT)」を行い、1年間の学習の成果がどのように出ているかをデータ化します。これにより、子どもたちの学び直しや先生方の教え直し、子どもたちへのアプローチを見つめ直し、今後の学校全体の教育方針をより良いものへと改善させていくことができます。
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