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力士とは力の士(さむらい)である 特集 角聖と呼ばれた男(2)

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茨城県水戸市 クリエイティブ・コモンズ

■考証
▽力士の意識改革と品格向上に努めた志
・市村 眞一さん 
県近現代史研究会名誉会長

常陸山は、侍としての生き方を大切にしていました。そこには、代々水戸藩に仕える武家に生まれたことが関係しています。
力士としての才能を見抜いた叔父は、常陸山の父に相撲界入りを勧めましたが、「武家であった市毛家から裸踊りのような力士を出すことはできない。」と猛反対されてしまいます。それでも叔父は諦めず、周囲の協力を得ながら辛抱強く説得したことで、何とか許してもらうことができました。
このようなことがあったからこそ、常陸山は「相撲は野蛮なもの」という偏見を払拭するため、力士は武士道を重んじ、品格を身につけなければならないと考えるようになったのです。
しかし、当時の相撲界は、自分をひいきにしてくれる客の席を回って酒杯を受ける「桟敷回り」など、力士本来の務めとはかけ離れた習慣がありました。
その背景には、明治維新後の廃藩置県が影響しています。大名のお抱え力士として保障されていた身分が、廃藩置県によってなくなってしまったため、力士たちは経済的に支援してくれるひいき客の機嫌を取ることを気にするようになり、本業がおろそかになっていったのです。
この状況を憂(うれ)いていた常陸山は「酒をつぐのが力士の仕事ではない。力士は相撲で勝負するものだ。」として、この習慣を廃止します。
「力士は人間として紳士らしく振る舞わなければならない。普段の生活も礼節をわきまえ、一般の人へも礼儀正しく接しなければならない。」と諭し、力士の意識改革とともに品格向上に努めていました。
相手に感謝し、土俵に感謝し、師匠に感謝する。謙虚さに裏打ちされた、清く正しく美しい気高さこそが、力士の品格であるという考えは、今の相撲界にも浸透しています。相撲が国技と呼ばれるようにまでなったのは、常陸山の功績によるものなのです。

■伝承
▽水戸の誇りを取り戻す無敵の強さ
・藤井 達也さん 
市立博物館学芸員

常陸山は、明治時代の大相撲の最盛期を支えた人物です。
明治時代後期はメディアが発展してきた時期でもあり、無敵を誇った常陸山の活躍が知れ渡ったことで、人気が全国的に広がり、それとともに、相撲界の地位も確立されていきました。常陸山が活躍していた時期は、ちょうど日清・日露戦争の頃で、日本の勝利とともに、日本固有の文化に注目が集まるようになったことも、大相撲の人気に拍車がかかった理由でもあります。
水戸藩では、尊王攘夷(じょうい)思想などで幕末の政治史を大きく動かしましたが、激しい藩内の抗争で、多くの優秀な人材を失いました。そのため、明治の新時代に人材を送り出すことができず、水戸の人々はコンプレックスを抱いていました。そのような中、常陸山の活躍は、水戸の人々に勇気や希望を与えたものと想像されます。

明治に入ると日本は外国との交流も盛んになり、日本人が海を渡ることは、特に珍しいことではありませんでしたが、「日本人はひ弱で野蛮な人種」という差別意識が強く残っていました。
この状況の中、常陸山はアメリカへ渡り、ルーズベルト大統領の前で土俵入りを披露します。
アメリカの人たちに日本人の力強さや礼儀正しさを見せ、偏見の解消に努めたことは、常陸山の大きな功績の一つでもあります。

大相撲の人気に伴い、会場には多くの人たちが駆けつけるようになりました。このため、もっと多くの人を収容できる会場が必要となり、常設館を建設しようとする機運が高まります。
これまでの会場は臨時の施設であったため、雨漏りがひどくて中止や延期となることが度々あり、また、興行ごとに建設と取壊しを繰返すなど、非常に不便なものでした。このため、新たな常設館の必要性は誰もが理解していましたが、莫大な費用がかかることから実現には至っていませんでした。
国技館は明治42年に完成しますが、その背景には、全盛を迎えた大相撲の人気があり、その礎を築いたのが常陸山なのです。

■常陸山生誕150年記念事業
▽常陸山生誕150年記念事業 水戸市出身の伝説の横綱・常陸山について学ぼう
常陸山の功績や相撲の歴史、魅力について学ぶイベントです。
2024.9.25(水) 13:00~15:00
事前予約制 抽選300名
会場:城東小学校

・城東小学校児童による学習発表
・常陸山トークセッション
ゲスト:
二所ノ関親方(第72代横綱稀勢の里)
市村眞一(県近現代史研究会名誉会長)
酒葉誠(城東小学校教諭)
藤井達也(市立博物館学芸員)

申込み:右記の二次元コードまたは往復はがきに必要事項を記入し、申込んでください
※詳細は本紙またはPDF版をご覧下さい。
申込期限:9月10日(火)(必着)
※抽選結果は、郵送で、申込者全員(代表者)にお知らせします。

問合せ:歴史文化財課
【電話】306-8132

▽常陸山生誕150年記念 特別展
常陸山谷右衛門ー「角聖」の生きた時代ー
常陸山が生きた明治・大正時代に焦点を当て、生涯を辿りながらその功績を紹介します。出身地である水戸や茨城との関わりも取り上げます。
2024.10.19(土)~11.24(日)
※月曜日(祝日のときは翌日)休館。
会場:市立博物館
料金:
一般…200円(20名以上の団体150円)
無料…18歳以下の方、65歳以上の方、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳所持者とその付き添いの方(1名)
展示解説:10.20(日)、11.3(日)、16(土)、24(日)
各日とも11:00から、14:00から
※申込不要。会場にお集まりください。

問合せ:市立博物館
【電話】226-6521

▽常陸山生誕150年記念 オリジナルデザイン商品販売!
・記念どら焼き
価格:1個230円
販売店舗:
亀じるし本店
エクセルみなみ店
那珂インター店
販売時期:9.25から

問合せ:亀印製菓株式会社
【電話】080-0080-1431

・記念酒
販売時期:9月以降

問合せ:
吉久保酒造株式会社【電話】224-4111
明利酒類株式会社【電話】247-6111

問合せ:歴史文化財課
【電話】306-8132

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