■児童福祉施設と関係性
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里
前回に続き「行方市SDGsフィールドワーク2023」を通じた、本学学生の考察についてご紹介させていただきます。学生による原文を尊重し、必要な編集を行っております。市民の皆さんのご参考になれば幸いです。ご協力をいただいた児童養護施設「るんびにー」の皆さんや、関係各位に心より御礼申し上げます。
1.児童同士の関係性と愛着形成
現在、日本では親と暮らせない子どもが4万5千人以上存在するとされ、児童養護施設は彼ら/彼女らの健康な発達を支え、重要な役割を果たしている。今回訪問した児童養護施設「るんびにー」では、インタビューやボランティア活動を行う貴重な機会をいただいた。その中で、愛着の形成は子どもの健やかな成長に重要であり、児童養護施設がその機会の提供を担っていると考えた。
施設では職員の入れ替わりもあるため、児童同士の関係構築と愛着形成が重要と思われる。子どもたちと交流する中で、児童同士の信頼関係や協力が築かれている様子を肌で感じ、施設が持つ子どもたちの愛着形成にとっての重要性を確認することができた。児童養護施設から子どもたちが将来巣立ち、社会において不自由なく生活できるよう、私たち一人一人が自分ごととして関心を持ち、社会全体として支援していく必要があろう。(4年生、男性)
2.「第三の大人」としての関係性
現在、児童養護施設では離職率の高さ等が要因となり、人手不足が大きな課題となっている。しかし実際に行方市の児童養護施設を訪ねたところ、職員は児童らから信頼され、友達のような関係性を築いている姿が印象的だった。
そのカギとなるのは、職員の「第三の大人」としての子どもとの関係性であろう。職員は親の代わりになるのではなく、ある意味「割り切って」子どもたちと関わることを大切にしていた。職員は、子どもたちのやりたいことを尊重し、受容をしつつも「ダメなことはダメ」と線引きをしていた。
他方で、児童一人一人に対して常に職員が対応をすることは、物理的に難しい場合もあると思われる。今後、職員の充実にむけて、大学との連携も重要となろう。例えば、実情の理解を深めてもらうための講演や、実習生を多く受け入れる等が考えられよう。(4年生、男性)
3.教育機関との関係性
子どもたちの包括的な支援は、児童養護施設のみで完結するものではなく、関係機関との連携を図ることが必須となる。私は教育機関との連携に焦点を当て、インタビューを行った。当初、教育機関との連携に困難があるのでは、と予想していた。だが、実際にお話をお伺いしたところ、職員の方々はそこまで困難に感じたことはない、とのことで、大きな発見であった。
その理由として、第一に、教育機関との話し合いの場が適切に設けられていること、第二に、児童養護施設の環境づくりが重要であることが分かった。こうした児童養護施設と教育現場との連携を通じて、子どもたちの教育の充実そして貧困解消の一翼を担っていくことが期待される。(3年生、女性)
<この記事についてアンケートにご協力ください。>