■気候変動対策と脱炭素・ネットゼロ
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里
1.温室効果ガス削減と脱炭素
先月号でご案内の通り、気候変動対策のためには温室効果ガスの排出削減が必須です。中でも二酸化炭素は温室効果ガスの排出量の多くを占めるので、その対策が必須です(他に、メタン、一酸化二窒素、フロン等)。
COP28でも「2050年までに世界のネットゼロを可能とするために、全ての化石燃料からの脱却を図る」(UAEコンセンサス)とされました。二酸化炭素を排出する化石燃料(石油、石炭等)からの脱却、つまり、脱炭素への取り組みが重要となります。
2.ゼロエミッション―二酸化炭素の排出ゼロを目指す
では、脱炭素社会にどのように取り組んでいけばよいのでしょうか。国連大学(UNU)は、「ゼロエミッション」、つまり「人為的活動から発生する排出を限りなくゼロにすることを目指す」構想を1994年に提唱しました。二酸化炭素も人為的な活動から発生するものですので、このゼロエミッションに含まれます。
二酸化炭素の排出の大半はエネルギー起源なので、化石燃料に依存しないようにすることが重要です。ゼロエミッションでは「自然界に存在する持続可能な生態系に倣い、異業種にまたがって無駄なく資源が循環される産業クラスターを基礎とする、環境と調和した持続的な社会経済システムの構築」(UNU)を目指します。
3.ネットゼロ(カーボンニュートラル)―二酸化炭素の排出を「正味ゼロ」にする
「ネットゼロ」(net zero)とは、二酸化炭素の排出抑制と吸収で、排出の実質上「正味ゼロ」にする点が特徴といえます。「カーボンニュートラル」も考え方の基本は同じです(図)。二酸化炭素の再生可能エネルギーや電気自動車(EV)への転換を通じた削減と、植林等による吸収を通じて、「カーボンオフセット」つまり炭素(carbon)を相殺(offset)する取り組みがなされています。
2018年、ネットゼロを目指すうえでの重要な『1・5℃の地球温暖化』特別報告書が、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の要請に基づいて、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC、1998年設立)により作成されました。IPCCは気候変動対策に対して、科学的な知見や政策的根拠を提供する機関です。以前のおさらいですが、UNFCCCパリ協定では地球の気温上昇を産業化以前と比して1・5℃~2・0℃に抑えるとしています。
その概要ですが、私たちの生活に及ぼす影響として、「健康、生計、食料安全保障、水供給、人間の安全保障、及び経済成長に対する気候関連のリスクは、1・5℃の地球温暖化において増加し、2℃においてはさらに増加する」とされています。そして、地球温暖化を1・5℃に抑えるために、「世界全体の人為的なCO2の正味排出量が、2030年までに、2010年水準から約45%減少し、2050年前後に正味ゼロに達すると予測される」とされています(「1・5℃特別報告書」SPM、環境省2018参照)。これにより、日本をはじめ世界は、2050年ネットゼロに向けた取り組みを加速化しています。
※図は本紙参照
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