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SDGsで共に創る持続可能な行方 第41回

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茨城県行方市

■気候変動と農業
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里

1.農業とSDGs目標2
茨城県は全国有数の農業県であり、行方市においても農業は主要産業で、私たちの生存になくてはならないものです。農業は、自然の恵みによって営まれるがゆえに、気候変動の大きな影響を受けるため、適応策が重要となります。
SDGs目標2では「飢餓を終わらせ、食料の安定確保と栄養状態の改善を実現し、持続可能な農業を促進する」とあります。また、ターゲット2・4では「2030年までに、持続可能な食料生産システムを確立し、レジリエントな農業を実践する。そのような農業は、…気候変動や異常気象、干ばつ、洪水やその他の災害への適応能力を向上させ」るとされています。

2.気候変動の農業への影響
では、気候変動は農業にどのような影響をもたらすでしょうか。国連食糧農業機構によれば、次の2つに大別できます(FAO2007)。第一に、生物物理学的な影響です。具体的には、(1)穀物、牧草、森林や家畜への質・量における生物物理学的影響、(2)土地、土壌、水源の質・量における変化、(3)雑草や病害虫の問題の深刻化、(4)影響の分布の空間・時間の変化等が挙げられます。
第二に、社会経済的な影響です。具体的には、(1)収穫や生産の減少、(2)農業によってもたらされる国内総生産(GDP)への増加分の減少、(3)世界市場の価格の不安定化、(4)貿易体制の地理的変化、(5)飢餓や食料安全保障の危機に瀕する人口の増加、(6)人口移動や社会の不安定化等が挙げられます。

3.農業への気候変動による影響への適応
次に、こうした農業への気候変動による影響に対して、どのような適応策が求められるか、見ていきましょう。気候変動適応法により、茨城大学には茨城県からの要請を受けて、大学としては全国初の「茨城県地域気候変動適応センター」が2019年4月に開設されました。地域の気候変動適応策の中心的役割を果たしており、2020年に報告書『茨城県における気候変動影響と適応策―水稲への影響―』を刊行しました。
次の表は、私たちの主食である水稲の気候変動適応策の概要をまとめたものです(増富・田村2020)。生産者はもとより、国・行政、研究者、農業協同組合(JA)、企業が連携し、実施の時間、コスト、効果等に鑑みた取り組みが求められています。
同報告書では、「基本的な考え方」として短期~長期の対応策がまとめられています(同)。短期的には、現場で実施可能な栽培管理の高度化や変更、短期から中期では、高温に耐性の強い現存品種の導入や移植日の変更等となります。そして、長期的には、新品種の開発・導入が最も有効な適応策とされますが、コストがかかりますので、生産者・行政・研究者・企業等を交えて、計画的に実施していく必要があります。

表 水稲の気候変動適応策

出典:増富・田村(2020)

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