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特集 ものづくりを極める~鹿嶋発クラフトビールができるまで~1

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茨城県鹿嶋市

MADE IN KASHIMA

・PROFILE
唐澤 秀
karasawa shu
鹿嶋パラダイス代表
Paradise Beer Factory/Paradice Gelato and Donuts

■世界を魅了するクラフトビール
昨年12月、水戸市で開催された「G7(主要7カ国)茨城水戸内務・安全担当大臣会合」の歓迎レセプションにおいて、県内の多彩な食材を使った料理や銘酒などが振る舞われました。その中で、鹿嶋市のビール醸造所「Paradise Beer Factory(パラダイス ビア ファクトリー)」のクラフトビールが提供されました。この歓迎レセプションでのビールやワインは、各国の大使館職員による事前視察の際に試飲が行われ、投票により採用されたもので、レセプション当日も出席者の皆さんから高く評価されました。この世界を魅了するクラフトビールは、鹿嶋の地で自然栽培された麦から作られた鹿嶋発のビールです。
今回の特集は、世界でも数少ない自家製自然栽培の麦からクラフトビールを製造している唐澤秀さんに、自然栽培でのビールづくりへの思いやこだわり、将来の目標などについてお話を伺いました。取材の際、農業やビールなどについて熱く語る唐澤さんの生き生きとした姿がとても印象的でした。ぜひ皆さんも、世界に羽ばたく鹿嶋発のクラフトビールをご堪能ください。

■自然栽培農業への挑戦
農業を始めたきっかけは2つあります。1つ目は、私は食いしん坊でおいしいものを食べたいという気持ちが強かったからです。元々はシェフになりたかったのですが、中学生の時に読んだある本の中に世界の飢餓の状況や、将来先進国でも食糧危機が起きるという警告が書かれていて、それまで他人事と思っていたことが自分事になり危機感を感じて「せめて自分の食べるものは確保したい。だったら農業に行くしかない」と思い、大学は農学部に入り、その後農業法人に就職しました。農業法人で働いていた時に、アメリカやドイツなど、世界でトップの生産者を巡る旅をしましたが、その中で、彼らに共通していたことは、素材の生産から加工まですべて自分たちの手でやっていたことです。「こんなすごいものを作れるのならば、自分も日本でこの方式をやりたい」と思いました。
2つ目は、自然栽培に出会ったことです。自然栽培は肥料、堆肥、農薬を一切与えない栽培方法です。自然栽培と聞くと、栄養が与えられないというイメージを持つかもしれませんが、実際は人為的に栄養分を提供しなければ虫も寄ってこないし、病気にもならないのです。試しに畑を借りて無肥料・無農薬で自分で育てた野菜を食べたら、そのおいしさに衝撃を受けました。普通、堆肥や肥料を与えられたものしか口にできないのでわからないのですが、堆肥や肥料の独特な匂いはそれを餌とする作物に乗り移るため、作物本来の味とは違うものになっているということがわかり、「おいしさ」の概念が変わりました。どうせ食べるなら、本来のものを食べたいですもんね。
鹿嶋市へは、市内の方が畑を貸してくださったことが縁で、2008年に移住し、農園「鹿嶋パラダイス」を始めました。現在では年間耕作面積約18ヘクタールの畑で、麦や大豆を中心に、数十種類の野菜を育てています。

■ビールができるまで
畑で育てている野菜は、麦と大豆が全体の8割を占めています。「麦で耕し、大豆で肥料をやる」という言葉があるように、大豆は土の中の根粒菌を増やし空気中に無限にある窒素を植物に供給し、麦の根は土壌を柔らかくするので、自然栽培で野菜を育てる上で、大豆や麦の栽培は畑に栄養分を投入することなく作物を作るために最適な方法です。自然栽培は肥料や堆肥を与えないので、その分のコストはかかりませんが、その代わり草の管理に時間と労力がかかります。
日本での麦の自給率は13%、大豆は6%しかありません。なぜなら米や他の野菜に比べて販売単価がとても安いのが主な原因です。自然栽培の畑を育てるためには麦や大豆栽培が必須ですが、それらを素材で販売するには、安すぎて経営が成り立ちません。それらの価値を上げるためには、加工していくしか方法がないと思い、ビールを作ろうと決意し、東京の銀座で月に一度、4年間修行をして、2016年からビール醸造所「Paradise Beer Factory」を始めました。
麦を自然栽培で種から育ててビールができるまでは、2年ほど時間がかかります。今、畑で育てている麦は2026年のビール用の麦です。麦は11月に種をまき、翌年の5月末に収穫を行います。収穫後に麦は休眠期間に入り発芽率が下がります。そのため、麦芽に加工するのはさらに1年後の6月になります。そこから仕込みを行い、発酵や熟成などの工程を経てビールが飲めるようになります。

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