長崎くんちの演し物を華やかに彩る長崎刺繍
伝統を後世に伝えようと頑張るご夫婦の熱い思いがありました
■今月のつたえるひと
嘉勢照太(かせてるた)さん 路子(みちこ)さん
照太さんの繍号(しゅうごう)(作者名)は願生(がんしょう)。長崎市出身。72歳。江戸時代から伝わる長崎刺繍の技術を受け継ぐ唯一の職人。1995年長崎刺繍工房設立。妻の路子さんと共に長崎刺繍の保存・発展のための情報発信や人材育成にも尽力している。
■江戸時代から伝わる長崎刺繍 その奥深さがたまらない魅力
長崎の秋の大祭、長崎くんちの衣装や傘鉾(かさぼこ)垂れをきらびやかに彩っているのが長崎刺繍です。長崎刺繍は、17世紀後半に長崎に居住していた唐人によって伝えられた刺繍技術が、長崎のレベルの高い下絵師や縫い師によって独自の発展を遂げたもので、1本ずつ自分の手で刺繍糸をより、太さを調整することで質感や濃淡を表現しており、表情の豊かさと立体的な造形が特徴です。
私は30歳の時に長崎刺繍を手がける八田刺繍店に弟子入りして技術を習得し、八田氏逝去後は長崎刺繍を受け継ぎ、江戸時代に作られた長崎くんちの衣装や傘鉾垂れの補修・復元に取り組んでいます。とても根気のいる仕事ですが、歴史あるくんちに関わっている誇りや喜びは大きいです。現在補修中の西浜町の傘鉾垂れは1862年に制作されたもので、当時の高級舶来品だった「ラシャ」の布地に中国蘇州の風景と詩が美しく細やかに刺繍で描かれており、長崎の貿易による豊かさと中国との親交を感じることができます。
この素晴らしい文化を絶やさないために、長崎刺繍を多くの方にもっと知っていただきたいと奮闘しているのが妻の路子です。刺繍教室の運営のほか、20年ほど前から長崎刺繍の新たな発展と人材育成を目指す『「長崎刺繍」再発見塾』の塾長として活動し、長崎歴史文化博物館の伝統工芸体験工房で刺繍体験を開催しています。生徒たちは私の指導で技術を磨き、くんちの衣装などの補修に携わるほか、来年のながさきピース文化祭2025では、長崎刺繍を着物全面に施した「オペラ蝶々夫人」の衣装を披露する予定です。
また、私自身の目標として、これからの10年は創作活動にも力を入れていきたいと思っています。
▽長崎歴史文化博物館
近世長崎の海外交流に関する貴重な資料や美術工芸品などを収蔵・展示。長崎奉行所ゾーンでは裁判記録に当たる犯科帳、キリシタンの取り締まりに用いた踏絵などが展示されています。
▽県立長崎図書館 郷土資料センター
長崎県に関する郷土資料のほか、県内で発行された新聞や長崎ゆかりの文学など約19万冊を所蔵。閲覧席にはソファ席もあり、落ち着いた空間で本を楽しむことができます。
▽眼鏡橋
1634年に中島川に架けられたとされ、日本最古のアーチ型石橋として国の重要文化財に指定されています。眼鏡橋の近くには飛び石が敷かれ、人気のフォトスポットになっています。
▽長崎市役所展望フロア
長崎市役所の19階にある展望スペース。地上80mから長崎のまちを一望でき、長崎港や女神大橋まで見渡せます。
▽興福寺(こうふくじ)
1620年創建の日本初の唐寺で日本黄檗宗(おうばくしゅう)発祥の地。第4代住職は煎茶や普茶(ふちゃ)料理などを日本に伝えた隠元(いんげん)禅師です。境内には国指定重要文化財の大雄宝殿や旧唐人屋敷門などたくさんの文化財や碑があります。
■バラエティにとんだ長崎刺繍 第13回長崎刺繍教室作品展
長崎刺繍教室の生徒と指導者である嘉勢願生先生の作品を展示。全てオリジナルの図案で、額装をはじめ着物や洋装品など、さまざまな長崎刺繍に出会えます。
日時:11月29日(金)~12月3日(火) 10時30分~18時30分(最終日は17時まで)
場所:コクラヤギャラリー万屋店(長崎市万屋町)
問合せ:長崎刺繍教室
【電話】090-2083-7161
■毎年恒例の特集展示 くんち三九〇年展
開館以来、毎年開催されているくんち展。祭礼の様子を描いた屏風や絵巻、写真や絵葉書、実際に使われた奉納踊の衣装など数々の関係資料と今年の踊町ゆかりの資料から、390年の歴史とその魅力を紹介。
日時:9月19日(木)~10月20日(日)
場所:長崎歴史文化博物館2階特集展示室
入場料:常設展観覧料で入館可能(大人630円、小中高生310円)
※県内の小・中学生、友の会会員、キャンパスメンバーズは無料
問合せ:長崎歴史文化博物館
【電話】095-818-8366
■長崎市のお土産
▽デンリュウの長崎カステラ
卵や小麦粉、もち米、水飴など素材にこだわり、伝統の製法で焼き上げた長崎カステラに「ながさき未来応援ポケモン」のデンリュウを刻印。パッケージには灯台や長崎をイメージしたデザインが施されています。
問合せ:(株)文明堂総本店
【電話】095-824-0002
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