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南島原の考古学

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長崎県南島原市

■黒曜石の大小~出口遺跡(深江町)~
出口遺跡(でぐちいせき)は、井手口墓地の少し山手にあり、諏訪地区ほ場整備事業に伴い発掘調査が実施されました。
発掘調査では、中世の掘立柱建物25棟や柱穴列2列、平行する大溝2条などが検出され、14~16世紀頃に大きな集落があったことが推測されます。そんな中世遺跡としても注目される出口遺跡ですが、今回は縄文時代の石器に目を向けてみます。
出口遺跡では、縄文時代の遺物として後期(約3200年前)と晩期(約3000年前)主に二つの時期の遺物が出土していて、そのなかに原石を連続的に割ってそのあと残った「石核」という石器があります。素材の黒曜石は火山性の天然ガラスで、その割れ口の鋭さから縄文時代に好んで石器の材料として利用されました。出口遺跡から出土する黒曜石の大部分は漆黒色で不純物をほとんど含まない良質なもので、その産出地は腰岳(佐賀県伊万里市)であると考えられています。黒曜石の石核には、5cmを超える大型品と、3cmに満たない小型品があります。大型品は縄文時代後期のもので、原石自体が大きいのでぜいたくに大割りし、まだ十分使えそうなのに廃棄していています。一方、小型品は縄文時代晩期のもので原石としても小さく、これ以上は使えないというくらいまで剥ぎ取りを行い、粗悪品を辛抱して使っていたようです。こうした後期・晩期の黒曜石利用の違いは、西北九州の縄文遺跡において共通してみられる現象です。いったいその原因は何だったのでしょうか?産出地の資源枯渇か、それとも採取集団や交易ルートの変化なのか。
こんなコラムを書いているかたわら、ニュースでは円安・ドル高がこのまま続けば家庭の支出は昨年より10万円以上増えるだろうと伝えています。西北九州の縄文晩期人も「最近の黒曜石の値上がりはどうにかならんのか、イノシシ何頭分だよ」きっと、そんなふうに嘆いていたにちがいありません。

▽6月~7月の小企画
日時:6月1日(土)~7月31日(水)午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
※休館日…火曜日
場所:深江埋蔵文化財・噴火災害資料館
料金:
・一般…200円
・高校生…150円
・中学生以下…無料
※団体割引あり
※企画展は入館料のみでご覧いただけます。

問合せ:文化財課(南有馬庁舎)
【電話】73-6705

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