「壱岐市磯焼け対策協議会における、植食性魚類(イスズミ)駆除の取組」によりJブルークレジットの認証を受けました
◆長崎県 実りの島 壱岐 イスズミハンターいきいきプロジェクト
・壱岐市磯焼け対策協議会
郷ノ浦町漁業協同組合、勝本町漁業協同組合、箱崎漁業協同組合、壱岐東部漁業協同組合、石田町漁業協同組合、長崎県、壱岐市、壱岐栽培センター
○プロジェクトの概要
・近年の気候変動等の影響に伴う水温上昇により、植食性魚類(イスズミ等)の摂食活動が長期化及び活性化し、食害による磯焼けが拡大。
・令和元年度より、イスズミハンターによるイスズミ駆除等を実施し、藻場の保全に取り組んでいる。
○プロジェクトの特徴・PRポイント
・プロジェクト対象範囲には約276haの広大な藻場が繁茂している。
・クレジット認証されたCO2吸収量は、約974.6t-CO2※にもなる。
※約80haの杉林における年間CO2吸収量に相当
・漁業者と連携し、駆除方法等に創意工夫を重ねたことにより、本来捕獲が難しいとされているイスズミの大量駆除を可能とした。
・藻場の回復による魚類の蝟集効果、地元の小・中・高校生を対象とした海洋環境学習の推進など、多様な価値の創出が期待される。
・本プロジェクトの継続的な実施が、カーボンニュートラルへの貢献だけでなく、生物多様性の回復に寄与する。
〔魚類の蝟集効果〕
・イスズミ駆除の実績
プロジェクト期間中(R1~R4)に、のべ26,664匹のイスズミを駆除。
令和1…5,194匹
令和2…3,669匹
令和3…9,741匹
令和4…8,060匹
・イスズミ駆除によって守られた海藻の量
3(※1)×0.05(※2)×26,664(※3)×300(※4)≒1,200(t)
(※1)…イスズミの平均体重(kg)
(※2)…イスズミが1日に食べる量(体重の5%)
(※3)…イスズミ駆除数(R1~R4)
(※4)…イスズミの年間摂食日数
↓
プロジェクト実施により藻場が回復したことで、魚類の蝟集効果が確認できた。
また、回復した藻場が新たにイカの産卵場になっている。
〔海洋環境学習〕
プロジェクト期間中(R1~R4)に海洋学習の一環として「水産教室」を小・中・高校生を対象に実施。
4年間でのべ1781名が参加(小学生:989名、中学生:516名、高校生:276名)
令和5年12月11日、壱岐市磯焼け対策協議会は、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)(※1)から、ブルーカーボン(※2)の定量的評価により、Jブルークレジット(R)(※3)974.6t-CO2の認証を受けました。このクレジット量は、令和2年度にJブルークレジット制度が創設されて以降、単年度ベースで最大量となるもので、政府が進めるカーボンオフセット(※4)の推進にも寄与する取組です。
◆磯焼けとなった原因
壱岐周辺海域では、平成25年と平成28年の夏季に30℃を超える高水温が長期間観測されました。高水温により海藻が弱体化しているところを台風に見舞われ、大時化で大量の海藻が流出したことで藻場の衰退が急速に進み、平成30年頃にはほとんどの藻場が消失しました。また、近年の気候変動の影響により海水温が上昇し、イスズミ等の植食性魚類の摂食活動が長期化・活発化したことで、消失後の藻場で新たに生えてきた幼体がイスズミに食べ尽くされるなど、藻場の回復力を植食性魚類の食圧が上回る形で生態系のバランスが崩れた状態となりました。
◆取組内容とその成果
壱岐市では、緊急にイスズミを駆除し個体数を減らすことで崩れた生態系バランスを戻すことを目的として、令和元年度より磯根資源回復促進事業を展開し、植食性魚類であるイスズミ・アイゴの積極的な漁獲を促すことで、藻場の早期回復を目指しました。
そして、藻場回復をさらに加速させるため、壱岐市磯焼け対策協議会では、令和2年度からイスズミハンター事業を開始して壱岐市内漁業協同組合所属正組合員を捕獲員として雇用し、令和2年度65名、令和3年度60名、令和4年度68名にイスズミの捕獲作業に従事頂きました。
上記の2事業によるイスズミ捕獲数は、令和元年度5,194尾、令和2年度3,669尾、令和3年度9,741尾、令和4年度8,060尾(4か年の合計26,664尾)と、他に類を見ない数のイスズミの駆除に成功しました。その結果、三島地区及び渡良地区の一部の海域でホンダワラ類が急速に回復し、令和5年春には、約270haの藻場の群落を確認し、計測データをもとに、制度に基づいてプロジェクトを申請した結果、審査認証委員会での審議を経て、Jブルークレジットの認証に至りました。
◆今後について
今回発行されたクレジットの保有者は壱岐市磯焼け対策協議会となり、今後、市並びにJBEと連携して購入者の公募・販売を進めます。その収益を活用し、更に磯焼け対策を拡充させることにより、全島的に磯焼け対策を加速化させ、本市周辺海域における海藻の早期回復を図ります。
※1 ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)
沿岸域における気候変動対策を促進し、海洋植物によるブルーカーボンの定量的評価、技術開発及び資金メカニズムの導入等の試験研究を行うため、令和2年7月に設立された国土交通大臣認可の技術研究組合。
※2 ブルーカーボン
平成21年10月に国連環境計画(UNEP)の報告書において、藻場・浅場等の海洋生態系に取り込まれた(captured)炭素が「ブルーカーボン」と命名され、吸収源対策の新しい選択肢として提示。ブルーカーボンを隔離・貯留する海洋生態系として、海草藻場、海藻藻場、湿地・干潟、マングローブ林が挙げられ、これらは「ブルーカーボン生態系」と呼ばれる。
※3 Jブルークレジット(R)
日本国内で実施したブルーカーボンを増加させるプロジェクトの実施により実現された温室効果ガス吸収量のうち、JBEから独立した審査認証委員会が認証した温室効果ガス吸収量。
※4 カーボンオフセット
市民、企業、NPO、NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で排出削減・吸収量等を購入することまたは他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部または一部を埋め合わせること。
※詳しくは本紙をご覧ください。
問合せ:水産課 水産班
【電話】44-6114
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