◆睡眠時無呼吸症候群
市立大村市民病院 総合診療部 久保地泰仁先生
睡眠時無呼吸症候群とは名前のとおり、睡眠中に呼吸が止まって無呼吸になったり十分な呼吸ではない低呼吸になったりする病態です。「いびきがうるさくて全然寝られなかった」「寝たと思うけど、昼間眠過ぎて仕事にならない」といった自覚、他覚症状が代表的です。
睡眠時無呼吸を有する患者さんの70%が肥満といわれますが、アジア人のように顎の形態が小さい人種は肥満体形でなくても睡眠時無呼吸の場合があり、必ずしも自覚症状があるとは限りません。
呼吸というのは体の中の酸素と二酸化炭素を交換するために重要な無意識の動作で、生命維持にとても重要です。それが寝ている間に止まってしまうと聞くと「寝ている間に死んじゃうんじゃないか」と怖くなってしまうかもしれません。ですが、人間の体はよくできていて、無呼吸によって引き起こされた体内の低酸素や高二酸化炭素の状態を感知して血圧や心拍数を上昇させて体を覚醒させ呼吸を再開します。
「じゃあ、問題ないじゃないか」と思われるかもしれませんが、そういったストレスによって意識は寝ているけど体は高ぶった状態になってしまうことが問題です。睡眠による十分な休息を得られず、無呼吸によって蓄積した身体疲労が日中に持ち越されると、高血圧、心不全、不整脈といった病気の原因になります。
診断には、自宅でも可能な簡易ポリグラフィ検査、入院して行う終夜睡眠ポリグラフィ検査(PSG)があります。睡眠中1時間当たりの無呼吸・低呼吸指数(AHI)を評価します。
簡易型ではAHIが40以上で治療適応になり、15以上でより正確な入院でのPSG検査が勧められます。PSGのAHIが15以上で心疾患発症の危険性が高まるといわれており、治療を検討する段階になります。治療はもちろん就寝中に行います。無呼吸の程度にもよりますが、空気を気道に送り込むマスクを装着し気道閉塞を回避する方法(CPAP療法)やマウスピースで気道閉塞を回避する方法、抱き枕で横向きに寝る方法などがあります。
睡眠の質が話題になる昨今ですし、気になられた人は医療機関での相談をご検討ください。
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