◆誰もが認知症当事者になる時代が到来
◇認知症基本法とは
県オレンジチューター 県認知症介護指導者 白仁田 敏史氏
日本は、世界一の長寿国。認知症とともに生きる高齢者人口は、今後も増加することが予測されています。
認知症と診断されなくても、歳を重ねていく中で、認知機能は低下します。長年、認知症の人の介護に携わって思うことは、「ものを覚えられなくなる、できていたことができなくなる」ということより、それによって「恥をかかせられる、馬鹿にされる」といった気持ちが、認知症の進行に大きく影響しているということです。
「共生社会の実現を推進するための認知症基本法(以下「基本法」)が令和6年1月1日に施行。初めて、認知症のことが法律化されました。この基本法は、認知症の有無によって線引きせず、同じ国民としてどのような社会をつくるか、という視点に立って作られました。
これまで、認知症の人は「何もできない人、分からなくなる人」という偏見の中で孤立してきましたが、基本法第3条に「全ての認知症の人が、基本的人権を享有※する個人として、自らの意志によって日常生活および社会生活を営むことができるようにすること」と、本人の声を反映することが明記されました。
基本法施行により、行政や医療、介護、福祉、暮らしに関わる公共交通機関や企業のサービス、認知症当事者や家族に関わる、あらゆる物事が進められていくことになります。
※享有…生まれながらにして持っていること
◇共生社会を実現するために
一人一人に求められること
(1)医学的な基礎知識や症状の特徴や予防
(2)認知症の人と接するときの心構え
(3)地域での見守り
(4)認知症を介護している人の気持ち
などを理解することが必須に
◆認知症との共生 共に生きる~私たちみんなの未来のために~
日本認知症予防学会専門医 認知症サポート医 伊崎脳神経外科・内科 伊崎 明院長
◇社会・地域が形成するもの
地域に必要なものは、「地域包括ケアシステムの推進」です。難しい言葉ですが、要は、認知症のケアに必要な医療・介護・福祉・ボランティアなどの連携が、円滑にできる環境を整備することです。誰に相談しても、症状に程度の差こそあれ、このシステムが機能し、認知症の人が住み慣れた地域で安心して生活環境を整えることが必要です。
「病院に連れて行ったら、診断や治療だけでなく、必要なサービスにつなげてくれて助かった」「地域包括支援センターに相談したら、介護保険サービスや配食の手配も手伝ってもらいひと安心」…このような環境を整え、高齢化、認知症者が増加する中で、一人でも多く「安心した」「助かった」と言える地域住民を増やすこと。これこそが、「地域包括ケアシステムの推進」と言えるのです。
◇私たちにできること
ここで、一般市民として参加する、活動する具体的な方法を考えてみましょう。
・認知症を理解する
「認知症サポーター※養成講座」など、地域で行われている普及活動に参加し、認知症に対する理解を深めましょう。
・趣味の活動やイベントに参加する
認知症を予防するには、日々の生活習慣や活動が大きな役割を果たします。あわせて、参加者の中に認知症の人がいるときは、寄り添い、ふれ合う時間をつくりましょう。
・認知症の人の家族の声に耳を傾ける
認知症の人を介護する家族の負担は、想像以上に大きいものです。ご家族に寄り添う、地域のつながりを大切にしましょう。話に耳を傾けるだけで、話す人は救われます。
認知症の人が尊厳を持ち生活できる共生社会を目指し、「一人一人ができることを少しずつ」考え、行動する意識を持ちましょう。共に生きる社会の実現は、まさに、私たち全員の未来のためなのです。
※認知症サポーターとは
認知症に関する正しい知識・理解を持ち、当事者やその家族に対して、できる範囲の手助けをする人のことです。市では、市民の皆さんや企業・団体などを対象に、養成講座を開催しています。
問合せ:地域包括支援センター
【電話】53・8141
◇認知症サポーター養成講座
日時:9月18日(水)、13時30分~15時30分
場所:ミライon
問合せ:ミライon図書館
【電話】48・7700
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